高度肥満を合併したPrader-Willi症候群に対する全身麻酔経験

Prader-Willi症候群は高率に肥満を合併するが,肥満に合併するさまざまな疾患や高度肥満それ自体が安全な麻酔管理の妨げとなる.また,年齢とともに変化する身体的および精神的問題に対し,口腔管理を行ううえでも術者の理解と対応が重要となる.今回,BMI 58.3の高度肥満を合併した本症候群の全身麻酔を経験したので報告する.患者は26歳のPrader-Willi症候群の女性.主訴は「虫歯を治療してほしい」であった.高度肥満,睡眠時無呼吸を認め,換気困難・挿管困難が予測された.初診時,患者は歯科治療ユニットへの仰臥は可能であったが,開口に拒否があった.短時間の強制開口で対応し,多数歯にう蝕を認め,...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 42; no. 2; pp. 175 - 180
Main Authors 伊藤, 正樹, 岩崎, ひとみ, 瓜生, 和貴, 和田, 鮎美, 小川, さおり, 黒田, 亜美, 堀越, あゆみ, 丹羽, 忍, 中村, 裕一郎, 松原, 誠, 岡部, 靖子, 松原, 礼子, 鈴田, 弓実, 松浦, 愛華, 大村, 元伸, 伊藤, さと美, 片浦, 貴俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 30.06.2021
日本障害者歯科学会
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.42.175

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Summary:Prader-Willi症候群は高率に肥満を合併するが,肥満に合併するさまざまな疾患や高度肥満それ自体が安全な麻酔管理の妨げとなる.また,年齢とともに変化する身体的および精神的問題に対し,口腔管理を行ううえでも術者の理解と対応が重要となる.今回,BMI 58.3の高度肥満を合併した本症候群の全身麻酔を経験したので報告する.患者は26歳のPrader-Willi症候群の女性.主訴は「虫歯を治療してほしい」であった.高度肥満,睡眠時無呼吸を認め,換気困難・挿管困難が予測された.初診時,患者は歯科治療ユニットへの仰臥は可能であったが,開口に拒否があった.短時間の強制開口で対応し,多数歯にう蝕を認め,全身麻酔下での歯科治療計画を立てた.減量のため待機期間中に全身麻酔へスムーズに移行できるようマスクトレーニングを積み,歯科治療完了後も長期的な口腔管理ができるよう指導した.減量は奏功しなかったが,全身麻酔では導入から換気,静脈路確保,挿管,術中の呼吸管理,抜管,術後管理まで大きなトラブルなく安全に麻酔管理ができた.本症例より,全身麻酔にいたるまでの行動変容や気道換気・気道確保困難に対するさまざまな準備,Prader-Willi症候群患者の年齢とともに変化する身体的および精神的問題に対し,早期から介入することが重要と考えられた.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.42.175