血行動態の著明な改善を認めた門脈肺高血圧症の1例

症例は40歳代女性.16歳時にC型肝炎を指摘され,その後肝硬変として近医でフォローされ,30歳時に門脈血栓症を認めた.某日,肝性脳症による意識障害にて当院へ救急搬送となり,胸腹部CTで肺動脈の拡張と,心エコーで著明な右心負荷所見を認め当科へコンサルトとなった.右心カテ—テル検査で肺高血圧症の診断基準を満たし,著明な脾腫および脾動静脈の拡張を伴っており,その他の肺高血圧症も否定的であったことから,門脈肺高血圧症の診断に至った.肺高血圧治療薬としてセレキシパグを用いたが改善には至らず,トルバプタンを中心とした利尿薬を用い,平均肺動脈圧86→37 mmHg,肺血管抵抗21.5→3.8 WUと著明な血...

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Published in心臓 Vol. 52; no. 1; pp. 64 - 69
Main Authors 小村, 茉穂, 東, 慶之介, 古賀, 貴博, 栗田, 康寿, 油尾, 亨, 井上, 勝, 三輪, 健二, 安田, 敏彦, 松原, 隆夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.01.2020
日本心臓財団・日本循環器学会
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Summary:症例は40歳代女性.16歳時にC型肝炎を指摘され,その後肝硬変として近医でフォローされ,30歳時に門脈血栓症を認めた.某日,肝性脳症による意識障害にて当院へ救急搬送となり,胸腹部CTで肺動脈の拡張と,心エコーで著明な右心負荷所見を認め当科へコンサルトとなった.右心カテ—テル検査で肺高血圧症の診断基準を満たし,著明な脾腫および脾動静脈の拡張を伴っており,その他の肺高血圧症も否定的であったことから,門脈肺高血圧症の診断に至った.肺高血圧治療薬としてセレキシパグを用いたが改善には至らず,トルバプタンを中心とした利尿薬を用い,平均肺動脈圧86→37 mmHg,肺血管抵抗21.5→3.8 WUと著明な血行動態の改善を認めた.今回,肝性脳症を契機に診断され著明な血行動態の改善を認めた門脈肺高血圧症の1例を経験した.文献的考察を加え臨床経過を報告するとともに,門脈肺高血圧症に対する治療戦略として安易な肺高血圧治療薬の初期併用療法を避け,病態に応じて利尿薬による前負荷軽減を優先する必要性が示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.52.64