歯根肥大を認めたMowat-Wilson症候群患者の2症例

Mowat-Wilson症候群(MWS)は,耳介の変形,眼間離開,太く濃い眉毛,尖った顎,細長い顔,目立つ鼻柱などの特徴的な顔貌と,中等度から重度の知的能力障害,小頭症,Hirschsprung病,細長い手指,脳梁低形成,尿道下裂,てんかんなど,多くの臨床症状を合併する遺伝子疾患である.口腔内の特徴としては,今までに歯の萌出遅延,高口蓋,口蓋垂裂,粘膜下口蓋裂,歯列不正などの報告がわずかにあるが,歯の形態的特徴について述べられた報告はない.今回,MWS患者2名の歯科治療を行い,共通した歯の形態的特徴を確認したため報告する.患者は17歳の男性と23歳の男性で,2名ともに知的能力障害により歯科治療...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 43; no. 2; pp. 143 - 149
Main Authors 河田, 亮, 髙野, 知子, 鈴木, 杏奈, 新倉, 啓太, 妹尾, 美幾, 麻生, 綾子, 池田, 正一, 小松, 知子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 30.06.2022
日本障害者歯科学会
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.43.143

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Summary:Mowat-Wilson症候群(MWS)は,耳介の変形,眼間離開,太く濃い眉毛,尖った顎,細長い顔,目立つ鼻柱などの特徴的な顔貌と,中等度から重度の知的能力障害,小頭症,Hirschsprung病,細長い手指,脳梁低形成,尿道下裂,てんかんなど,多くの臨床症状を合併する遺伝子疾患である.口腔内の特徴としては,今までに歯の萌出遅延,高口蓋,口蓋垂裂,粘膜下口蓋裂,歯列不正などの報告がわずかにあるが,歯の形態的特徴について述べられた報告はない.今回,MWS患者2名の歯科治療を行い,共通した歯の形態的特徴を確認したため報告する.患者は17歳の男性と23歳の男性で,2名ともに知的能力障害により歯科治療への協力が得られず,通法下での治療は困難であった.口腔内診査および全身麻酔下歯科治療を行った際に撮影したCT画像やデンタルエックス線写真,および抜去した智歯などから歯の大きさを計測したところ,2名の各臼歯の大きさは日本人の平均的な歯の大きさと比較して,計測の誤差を考慮しても全長が長く,特に歯根長が過大で肥大している傾向にあった.また,抜去した智歯の病理組織診断により,肥大した歯根はセメント質過形成と診断された.今回の調査では,2名の患者に共通した歯の形態的特徴として過大な歯根長と歯根肥大が認められ,MWSの特徴的な口腔内所見の一つである可能性を見いだせた.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.43.143