感染性心内膜炎との鑑別に苦慮した大動脈2尖弁を伴う巨細胞性動脈炎の1例
症例は78歳, 女性. 発熱, 貧血, 著しい体重減少および労作時息切れにて入院. 心エコー上, 2尖弁による大動脈弁狭窄症のほか, 僧帽弁前尖に疣贅のような索状組織を認めたため, 感染性心内膜炎疑いで長期抗生物質治療を続けたが, C反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)は陰性化しなかった. 第112病日, 大動脈弁置換術を施行. 心臓は心膜と全周性に癒着し, 僧帽弁の索状組織は疣贅ではなく, 断裂した僧帽弁腱索の一部であった. 上行大動脈は, 拡大(最大短径48mm)かつ壁が全体的に肥厚しており, さらに後壁の一部は菲薄化していた. 上行大動脈壁の病理検査にて巨細胞性動...
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Published in | 心臓 Vol. 43; no. 1; pp. 75 - 80 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2011
日本心臓財団 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.43.75 |
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Summary: | 症例は78歳, 女性. 発熱, 貧血, 著しい体重減少および労作時息切れにて入院. 心エコー上, 2尖弁による大動脈弁狭窄症のほか, 僧帽弁前尖に疣贅のような索状組織を認めたため, 感染性心内膜炎疑いで長期抗生物質治療を続けたが, C反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)は陰性化しなかった. 第112病日, 大動脈弁置換術を施行. 心臓は心膜と全周性に癒着し, 僧帽弁の索状組織は疣贅ではなく, 断裂した僧帽弁腱索の一部であった. 上行大動脈は, 拡大(最大短径48mm)かつ壁が全体的に肥厚しており, さらに後壁の一部は菲薄化していた. 上行大動脈壁の病理検査にて巨細胞性動脈炎と診断された. 術後にステロイド療法を開始したところ, 速やかに炎症反応は陰性化し, 術後35日目に軽快退院となった. 典型的な症状を呈さない巨細胞性動脈炎の診断は病理検査が決め手となるが, 特に大型血管炎では生検そのものが困難なため, 今回のように診断に難渋する場合が少なくない. 今後, 生検しないでも効率的に診断できるような新たな画像診断の発展が待たれる. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.43.75 |