てんかんの既往のある患者の亜酸化窒素吸入鎮静法の臨床使用について

亜酸化窒素吸入鎮静法(IS)は,てんかんの既往のある患者への使用は避けたほうがよいとされているが,てんかんを合併している患者に対しても行動調整として用いられている.しかしながらIS下での治療とてんかん発作の誘発との関連性に関する臨床実態調査はほとんど行われていない.そこで,てんかんの既往がある患者の歯科治療におけるIS使用時とIS不使用時の発作の有無を把握することを目的に,当科を受診したてんかんの既往があり,抗てんかん薬を服用している患者を対象として,過去5年間の診療録をもとに投与した亜酸化窒素濃度30%IS使用群とIS不使用群に分けて調査した.その結果,以下のことが明らかとなった.1.対象は...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 42; no. 2; pp. 153 - 159
Main Authors 李, 昌一, 横山, 滉介, 宮崎, 沙良, 重藤, 良太, 森本, 佳成, 小松, 知子, 大田, 祥子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 30.06.2021
日本障害者歯科学会
Online AccessGet full text
ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.42.153

Cover

Loading…
More Information
Summary:亜酸化窒素吸入鎮静法(IS)は,てんかんの既往のある患者への使用は避けたほうがよいとされているが,てんかんを合併している患者に対しても行動調整として用いられている.しかしながらIS下での治療とてんかん発作の誘発との関連性に関する臨床実態調査はほとんど行われていない.そこで,てんかんの既往がある患者の歯科治療におけるIS使用時とIS不使用時の発作の有無を把握することを目的に,当科を受診したてんかんの既往があり,抗てんかん薬を服用している患者を対象として,過去5年間の診療録をもとに投与した亜酸化窒素濃度30%IS使用群とIS不使用群に分けて調査した.その結果,以下のことが明らかとなった.1.対象は223名で平均年齢(SD)34.6(13.0)歳,うちIS使用群81名で平均年齢(SD)35.2(13.1)歳,IS不使用群142名で平均年齢(SD)36.3(14.0)歳であった.2.IS使用群に比較して,IS不使用群では知的能力障害患者が有意に多く,一方で,脳性麻痺ではIS不使用群に比較してIS使用群で有意に多かった.3.処置中にてんかん発作があった者は,IS使用群で3名,IS不使用群で5名であり,そのうち7名が平常時にてんかん発作があり,処置中のてんかん発作とIS使用の有無に有意な関連はみられなかった.4.ISによるてんかん発作の発生は有意とはいえない結果であった.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.42.153