障害者に対する全身麻酔下集中歯科治療の予後に関する検討
当診療所では,通常の歯科治療が困難で,多数歯に歯科疾患を有する障害者に対して,1回の全身麻酔で補綴装置装着まで行う,いわゆる全身麻酔下集中歯科治療により,早期に口腔の形態を回復し,健常者と同レベルの包括的歯科治療を提供できる治療システムを構築してきた.さらに,治療後は定期的なメインテナンスを原則とし,歯科疾患の重症化予防に努めてきた.しかしながら,再度全身麻酔下集中歯科治療を施行せざるをえない症例も経験してきた.そこで今回,障害者を対象とし,再施行にいたった要因を明らかにするためにレトロスペクティブに臨床的検討を行ったので報告する.調査期間は1993年4月から2020年8月までの17年4カ月間...
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Published in | 日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 42; no. 3; pp. 243 - 249 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本障害者歯科学会
31.10.2021
日本障害者歯科学会 |
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ISSN | 0913-1663 2188-9708 |
DOI | 10.14958/jjsdh.42.243 |
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Summary: | 当診療所では,通常の歯科治療が困難で,多数歯に歯科疾患を有する障害者に対して,1回の全身麻酔で補綴装置装着まで行う,いわゆる全身麻酔下集中歯科治療により,早期に口腔の形態を回復し,健常者と同レベルの包括的歯科治療を提供できる治療システムを構築してきた.さらに,治療後は定期的なメインテナンスを原則とし,歯科疾患の重症化予防に努めてきた.しかしながら,再度全身麻酔下集中歯科治療を施行せざるをえない症例も経験してきた.そこで今回,障害者を対象とし,再施行にいたった要因を明らかにするためにレトロスペクティブに臨床的検討を行ったので報告する.調査期間は1993年4月から2020年8月までの17年4カ月間,初回全身麻酔下集中歯科治療から3年以上経過した72例を対象とした.48例はメインテナンスで良好に経過したものの,24例は多数歯に及ぶ歯科疾患への罹患や増悪により,再度全身麻酔下集中歯科治療が施行されていた.再施行の要因として,患者因子として運動機能障害を有していること,1年以上のメインテナンス中断があること,初回治療において補綴治療,歯内療法,抜歯が少なく,大臼歯の残存数が多いこと,保存修復治療が多いことが関与していると考えられた.以上のことから,患者背景に沿って治療内容について考慮すること,メインテナンスの必要性を患者および介助者へ啓発することが重要であると考えられた. |
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ISSN: | 0913-1663 2188-9708 |
DOI: | 10.14958/jjsdh.42.243 |