津波被災地における3年間の心臓超音波健診の有用性

巨大災害発災後の被災地では循環器疾患の増加が報告されている.しかし被災者における循環器疾患の経年的変化は不明である.今回我々は災害慢性期の津波被災地で,被災者を対象に心臓超音波検査(ultrasound cardiography;UCG)の健診を行い,災害関連疾患としての循環器疾患の頻度と経年的変化について調査した.対象は宮城県亘理郡の仮設住宅および周辺住民の被災者で,被検者数は1回目207名(発災18カ月目;男45名,女162名,平均70.2±9.9歳),2回目125名(発災30カ月目;男37名,女88名,平均71.4±9.9歳),3回目121名(発災44カ月目;男32名,女89名,平均71...

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Published in心臓 Vol. 50; no. 1; pp. 48 - 59
Main Authors 大西, 秀典, 山村, 修, 植田, 信策, 齋藤, 佐, 前田, 文江, 江端, 清和, 柴田, 宗一, 榎本, 崇一, 坪内, 啓正, 佐藤, 尚美, 廣部, 健, 林, 寛之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.01.2018
日本心臓財団・日本循環器学会
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Summary:巨大災害発災後の被災地では循環器疾患の増加が報告されている.しかし被災者における循環器疾患の経年的変化は不明である.今回我々は災害慢性期の津波被災地で,被災者を対象に心臓超音波検査(ultrasound cardiography;UCG)の健診を行い,災害関連疾患としての循環器疾患の頻度と経年的変化について調査した.対象は宮城県亘理郡の仮設住宅および周辺住民の被災者で,被検者数は1回目207名(発災18カ月目;男45名,女162名,平均70.2±9.9歳),2回目125名(発災30カ月目;男37名,女88名,平均71.4±9.9歳),3回目121名(発災44カ月目;男32名,女89名,平均71.2±7.6歳)であった.全例に問診とUCGを実施し,希望者に迅速測定装置でN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-brain natriuretic peptide;NT-proBNP)の測定を行った.健診結果よりUCG有所見(弁膜症など)の推移および背景因子を検討した.その結果,UCG有所見者の割合は発災18カ月目より42.0%,60.8%,72.7%と年毎に増加し(p<0.0001),特に発災18カ月目と発災30カ月目の間で有意に増加した(p<0.001).NT-proBNPは有所見群が高値であった(p<0.001).有所見群の危険因子は各年度で変化したものの3回目では有意差は消失した.それにもかかわらず,有所見群の増加は継続した.災害関連疾患としての循環器疾患は,被災住民において経年的に増加する可能性が示唆された.今回の調査結果より,仮設住宅から一般住宅へ居住が移ることでリスク要因は減少するが,UCG所見の改善がないことから被災地での健診はUCGの必要性があると考える.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.48