Kingella denitrificansを起炎菌として多発脳塞栓を合併した自己弁感染性心内膜炎の1例

これまでに心疾患の治療歴なく, 健康診断で心雑音を指摘されたこともなかった43歳, 男性. 1カ月前から抗菌薬抵抗性の発熱が続き, 近医で行われた心臓超音波検査にて僧帽弁の疣腫を指摘されたことから, 精査加療のため当科へ入院した. 血液培養6セットのうち5セットからグラム陰性桿菌のKingella denitrificansが検出されたため, 同菌を起炎菌とした感染性心内膜炎と確定診断した. ただちに抗菌薬投与を開始したものの, 以後も発熱は治まらず, 末梢血白血球数も横ばいが続いた. また, 経時的に行った心臓超音波検査では疣腫の大きさに変化がないまま, その可動性が増大していた. さらに,...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 1; pp. 69 - 74
Main Authors 古財, 敏之, 浦部, 由利, 眞柴, 晃一, 久原, 学, 山本, 一郎, 関屋, 正俊, 池内, 雅樹, 栗栖, 和宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2012
日本心臓財団
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.44.69

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Summary:これまでに心疾患の治療歴なく, 健康診断で心雑音を指摘されたこともなかった43歳, 男性. 1カ月前から抗菌薬抵抗性の発熱が続き, 近医で行われた心臓超音波検査にて僧帽弁の疣腫を指摘されたことから, 精査加療のため当科へ入院した. 血液培養6セットのうち5セットからグラム陰性桿菌のKingella denitrificansが検出されたため, 同菌を起炎菌とした感染性心内膜炎と確定診断した. ただちに抗菌薬投与を開始したものの, 以後も発熱は治まらず, 末梢血白血球数も横ばいが続いた. また, 経時的に行った心臓超音波検査では疣腫の大きさに変化がないまま, その可動性が増大していた. さらに, 頭部のCTおよびMRIにて新鮮梗塞が多発していることが明らかとなった. そこで, 第10病日に準緊急で疣腫摘出術および僧帽弁置換術を行ったところ, 以後, 感染は速やかに終息した. 現段階で術後1年間半が経過しているが, いまのところ, 感染の再燃の徴候はない. 本症例はKingella denitrificansによる自己弁感染性心内膜炎の臨床的・病理学的確診例としては本邦初のものである. 今回は, 当院入院中の治療経過を報告するとともに, これまでの同菌による感染性心内膜炎の症例報告とあわせ, その臨床的特徴について考察する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.69