腰痛をめぐる常識の基礎

「はじめに」腰痛・下肢痛の治療体系には, さまざまな常識や通念が存在している. 近年においては, evidence-based medicine(EBM)の観点からそれらの根拠が次第に検証されつつある. 一方, より優れた治療法を発想するためには, 病態や治療の作用機序を基礎科学的側面から解明してゆくことも重要と思われる. 腰痛の起源は腰部構成要素に分布する神経終末の興奮であり, 腰椎疾患に由来する下肢痛の起源は求心性神経の異所性興奮である. このような神経興奮の側面から腰, 下肢痛に関する常識の背景にある機序を考察してみる. 「I. 腰痛の起源」腰痛の起源となる知覚神経終末は健常な髄核内を除...

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Published in日本腰痛学会雑誌 Vol. 12; no. 1; pp. 10 - 15
Main Author 熱田, 裕司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腰痛学会 2006
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ISSN1345-9074
1882-1863
DOI10.3753/yotsu.12.10

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Summary:「はじめに」腰痛・下肢痛の治療体系には, さまざまな常識や通念が存在している. 近年においては, evidence-based medicine(EBM)の観点からそれらの根拠が次第に検証されつつある. 一方, より優れた治療法を発想するためには, 病態や治療の作用機序を基礎科学的側面から解明してゆくことも重要と思われる. 腰痛の起源は腰部構成要素に分布する神経終末の興奮であり, 腰椎疾患に由来する下肢痛の起源は求心性神経の異所性興奮である. このような神経興奮の側面から腰, 下肢痛に関する常識の背景にある機序を考察してみる. 「I. 腰痛の起源」腰痛の起源となる知覚神経終末は健常な髄核内を除き, 前, 後縦靱帯, 棘間, 棘上靱帯, 線維輪, 椎間関節といった靱帯性組織, 椎骨の骨膜, 硬膜, さらに傍脊椎の筋組織などに分布している. 知覚神経終末の一部は侵害受容器であり1), 強い機械的刺激を加えると腰痛を惹起することはヒトでも観察されている2). 特にヘルニア周辺の線維輪, 椎骨終板, 後縦靱帯は, 比較的腰痛誘発の頻度が高いとされる. 一方, 腰痛患者において理学的検査所見から腰痛の起源を特定することはいまだ可能とはいえない.
ISSN:1345-9074
1882-1863
DOI:10.3753/yotsu.12.10