冠動脈に有意な器質狭窄を認めず,冠動脈攣縮を合併した心筋ブリッジを有する不安定型狭心症の4例

心筋ブリッジは時に心筋虚血の原因になったり,冠動脈攣縮を合併したりするため,一部の症例では心血管イベントの原因となり得る.今回我々は,当院で経験した冠動脈攣縮を合併した心筋ブリッジを有する不安定型狭心症の4症例を報告する. 症例1は72歳男性.不安定型狭心症の疑いで冠動脈造影検査が実施され,前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の高度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された. 症例2は84歳男性.除雪作業中に胸痛を訴えた後に,玄関先で倒れたために救急搬送された.不安定型狭心症の疑いで緊急冠動脈造影検査が実...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 1; pp. 73 - 82
Main Authors 勝田, 省嗣, 稲端, 翔太, 東, 雅也, 福尾, 篤子, 賀来, 文治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.01.2023
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.55.73

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Summary:心筋ブリッジは時に心筋虚血の原因になったり,冠動脈攣縮を合併したりするため,一部の症例では心血管イベントの原因となり得る.今回我々は,当院で経験した冠動脈攣縮を合併した心筋ブリッジを有する不安定型狭心症の4症例を報告する. 症例1は72歳男性.不安定型狭心症の疑いで冠動脈造影検査が実施され,前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の高度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された. 症例2は84歳男性.除雪作業中に胸痛を訴えた後に,玄関先で倒れたために救急搬送された.不安定型狭心症の疑いで緊急冠動脈造影検査が実施され,前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の中等度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された. 症例3は67歳女性.深夜に生じた激しい胸痛で受診.心電図にて胸部誘導で陰性T波を認め,急性冠症候群の疑いで冠動脈造影検査が実施された.前下行枝の近位部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の軽度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された. 症例4は35歳男性.交通事故で救急搬送されたが,搬送時の心電図にて下壁誘導と胸部誘導にて水平型~下行型のST低下を認めたため,急性冠症候群の疑いで緊急冠動脈造影検査が実施された.前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の高度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位の一部に高度な冠動脈攣縮が誘発された. 心筋ブリッジは機械的なメカニズムによる心筋虚血の原因になり得るが,それ以外に心筋ブリッジには冠動脈攣縮の合併が多いことも明らかになっている.心筋虚血の存在が疑われる症例における冠動脈造影検査で心筋ブリッジを認めた場合は,冠動脈攣縮の合併も念頭に置き,引き続き冠攣縮誘発検査を実施することが重要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.73