診断の過程で心臓MRIが有用であったミトコンドリア心筋症の1例
症例は40歳, 男性. 35歳時に1型糖尿病と診断され, 近医にてインスリン加療されていた. 感冒症状に続く両下肢の浮腫, 胸部X線にて胸水貯留を認め, 精査加療目的で入院となる. 心エコー図検査では左室壁運動は全周性に低下し(左室駆出率16%), 拡張型心筋症様であった. 心臓MRI検査では, 肥大型心筋症, 拡張型心筋症ともに非典型的所見であった. 母方の突然死などの濃厚な家族歴, 糖尿病の存在, 心臓MRIでの左室壁厚が保たれた全周性壁運動低下と遅延造影陰性という拡張型心筋症や肥大型心筋症のいずれにも非特異的な所見からミトコンドリア病を疑われ, 心筋生検にて, 大小不同のミトコンドリア形...
Saved in:
Published in | 心臓 Vol. 43; no. 3; pp. 362 - 368 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2011
日本心臓財団 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 症例は40歳, 男性. 35歳時に1型糖尿病と診断され, 近医にてインスリン加療されていた. 感冒症状に続く両下肢の浮腫, 胸部X線にて胸水貯留を認め, 精査加療目的で入院となる. 心エコー図検査では左室壁運動は全周性に低下し(左室駆出率16%), 拡張型心筋症様であった. 心臓MRI検査では, 肥大型心筋症, 拡張型心筋症ともに非典型的所見であった. 母方の突然死などの濃厚な家族歴, 糖尿病の存在, 心臓MRIでの左室壁厚が保たれた全周性壁運動低下と遅延造影陰性という拡張型心筋症や肥大型心筋症のいずれにも非特異的な所見からミトコンドリア病を疑われ, 心筋生検にて, 大小不同のミトコンドリア形態異常を認めた. また, 末梢白血球を用いた遺伝子検査でミトコンドリア遺伝子3,243変異を認め, ミトコンドリア心筋症と診断した. 治療として心不全薬物療法に加え, 両室ペーシング機能付植込み型除細動器(cardiac resyncronization therapy defibrillator; CRT-D)植え込み術を施行し経過良好であった. 今回, 明らかな神経症状・感音性難聴を伴わないミトコンドリア心筋症の1例を経験した. 糖尿病に心筋症を合併している症例ではミトコンドリア異常による心筋障害も鑑別疾患の1つにおき, 心臓MRIなどによる形態評価, 心筋生検を積極的に施行する必要があると考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.43.362 |