顎下部に発生した乳幼児線維腫症の1例

乳幼児線維腫症は軟組織と硬組織の両方に発生する線維性病変で,顎顔面領域には比較的稀な疾患である。症例は,左側下顎角部の有痛性の腫脹を主訴に当科を受診した3歳代の男児で,CTおよびMRI所見で軟組織の腫瘍性病変が指摘され悪性腫瘍の可能性も考えられたが,針生検では確定診断を得ることができなかった。3歳という患者の年齢から広範囲切除は行わずに形態および機能の温存を考慮して,腫瘍切除術を施行した。摘出物の病理組織学的所見では紡錘形の腫瘍細胞が認められ,細胞の異型性や核分裂像は認められなかったものの,一部では筋組織への浸潤も認めた。病理組織診断は,乳幼児線維腫症であった。術後5年経過した時点で再発所見は...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 21; no. 4; pp. 273 - 278
Main Authors 金丸, 祥平, 新美, 奏恵, 小田, 陽平, 小林, 正治, 西山, 秀昌, 新垣, 晋, 齊藤, 力
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2009
日本口腔腫瘍学会
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Summary:乳幼児線維腫症は軟組織と硬組織の両方に発生する線維性病変で,顎顔面領域には比較的稀な疾患である。症例は,左側下顎角部の有痛性の腫脹を主訴に当科を受診した3歳代の男児で,CTおよびMRI所見で軟組織の腫瘍性病変が指摘され悪性腫瘍の可能性も考えられたが,針生検では確定診断を得ることができなかった。3歳という患者の年齢から広範囲切除は行わずに形態および機能の温存を考慮して,腫瘍切除術を施行した。摘出物の病理組織学的所見では紡錘形の腫瘍細胞が認められ,細胞の異型性や核分裂像は認められなかったものの,一部では筋組織への浸潤も認めた。病理組織診断は,乳幼児線維腫症であった。術後5年経過した時点で再発所見は認められないが,本疾患では転移はしないものの局所再発を認めたとする報告もあり,引き続き厳重な経過観察が必要であると考えている。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.21.273