自閉スペクトラム症と歯科恐怖症を有するFontan循環成人患者の歯科処置に対する全身管理の一例
緒言:Fontan手術は,二心室修復が困難なチアノーゼ性先天性心疾患に対し上下大静脈を肺動脈へバイパスし単心室循環を確立する機能的修復術である.近年,同手術の治療成績向上に伴い,Fontan 循環患者の歯科処置を行う機会は増加している.症例:患者:22歳女性.障害名:軽度知的能力障害,自閉スペクトラム症.既往歴:幼少期にFontan手術.現病歴:歯科恐怖症のため近医にて静脈内鎮静を施したが,ミダゾラムとプロポフォールによる血管拡張から生じた静脈還流の低下が原因と思われる血圧低下があり,全身管理下の歯科治療を目的に当院へ紹介された.静脈内鎮静下で智歯抜去術とう蝕処置を計画した.経過:1回目は急変...
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Published in | 日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 45; no. 2; pp. 104 - 111 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本障害者歯科学会
30.06.2024
日本障害者歯科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0913-1663 2188-9708 |
DOI | 10.14958/jjsdh.45.104 |
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Summary: | 緒言:Fontan手術は,二心室修復が困難なチアノーゼ性先天性心疾患に対し上下大静脈を肺動脈へバイパスし単心室循環を確立する機能的修復術である.近年,同手術の治療成績向上に伴い,Fontan 循環患者の歯科処置を行う機会は増加している.症例:患者:22歳女性.障害名:軽度知的能力障害,自閉スペクトラム症.既往歴:幼少期にFontan手術.現病歴:歯科恐怖症のため近医にて静脈内鎮静を施したが,ミダゾラムとプロポフォールによる血管拡張から生じた静脈還流の低下が原因と思われる血圧低下があり,全身管理下の歯科治療を目的に当院へ紹介された.静脈内鎮静下で智歯抜去術とう蝕処置を計画した.経過:1回目は急変に備えて入院管理のもと手術室で処置を行った.経過良好であったため,2,3回目は外来診療室で行った.2回目は入室時に啼泣したため,3回目は入室前にミダゾラムを経口投与し,円滑に麻酔導入できた.歯科治療中も有害事象なく経過した.治療完了後は行動変容療法を用いながら定期的に予防管理を行っている.考察および結論:Fontan循環患者の麻酔法の選択は患者の全身状態や治療への協力度,術式などを考慮する必要がある.本症例は,まず入院管理のもと手術室で治療を行い循環動態および行動に問題がないことを確認し,同様の管理下で外来処置を行ったことで,入院という環境の変化で生じるストレスを軽減し,自閉スペクトラム症の特性にも配慮した全身管理が可能であった. |
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ISSN: | 0913-1663 2188-9708 |
DOI: | 10.14958/jjsdh.45.104 |