コンピューター画像解析を用いた顔面表情筋の共同運動の評価

顔面神経麻痺の後遺症として顔面表情筋の異常共同運動に関してはこれまでさまざまな報告がありまた種々の評価法が試みられてきている. 生理的にも表情筋はいくつかの筋肉が共同して表情を作っており, 異常共同運動と正常の複合した筋肉の動きの間の異同が気になるところである. 我々は経験的に顔面表情筋が共同して動くことは知っている. 例えば, イーと口を広げると眉毛外側のあたりが動いたり, 口笛の動作をすると無意識のうちに鼻根部あたりに力が入っていることなどである. 今回の研究ではこれらの動きを定量的に評価し, 様々な顔面表情筋運動において使われる表情筋の動きを解析し, 将来的に異常共同運動の他覚的評価を行...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 102; no. 8; pp. 996 - 1002
Main Authors 斎藤, 啓, 村田, 清高, 宮下, 仁良, 川本, 亮, 田中, 久哉, 磯野, 道夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1999
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.102.996

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Summary:顔面神経麻痺の後遺症として顔面表情筋の異常共同運動に関してはこれまでさまざまな報告がありまた種々の評価法が試みられてきている. 生理的にも表情筋はいくつかの筋肉が共同して表情を作っており, 異常共同運動と正常の複合した筋肉の動きの間の異同が気になるところである. 我々は経験的に顔面表情筋が共同して動くことは知っている. 例えば, イーと口を広げると眉毛外側のあたりが動いたり, 口笛の動作をすると無意識のうちに鼻根部あたりに力が入っていることなどである. 今回の研究ではこれらの動きを定量的に評価し, 様々な顔面表情筋運動において使われる表情筋の動きを解析し, 将来的に異常共同運動の他覚的評価を行う際の基礎データを得ることを目的とする. 対象は顔面神経麻痺の既往のない正常者37例 (男性18例, 女19例). 年齢20~40歳. 方法は被検者の顔面上に24点のマーカーを貼り, ビデオCCDカメラで被検者の顔面をとらえ, パーソナルコンピューターに取り込んだ. この画像を2値化処理し, 静止時より最大運動時までの10段階の顔面の動きに伴うマーカー各点の動きからその軌跡を計測した. 今回検討したのは閉眼運動, 額のしわ寄せ運動, 口笛運動, イーと歯をみせる運動の4つの表情運動であるが, いずれの表情運動においても, 顔面全体が協調しあって表情が作られていることが数量的に評価される結果となった. 正常者において, 少なくともある表情をつくるためには, 随意的に動かそうとする表情筋以外の表情筋の15-20%程度の共同は必要であり, このことが数量的に証明できた. 今後この結果は異常共同運動の評価の参考となろう. また, 男女間ひいては各個人の表情の微妙な違いは, 今回数量化できた随意的に動かそうとする表情筋以外の表情筋の動きつまり正常の共同運動の違いにあることが示唆された.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.102.996