メニエール病におけるグリセロールテスト前後の耳音響放射の変化

グリセロールテストの際に耳音響放射 (OAE) を蝸牛機能のモニタリング検査として利用することの臨床的有用性について検討した. 対象はメニエール病症例22例22耳で, グリセロールテスト前後に誘発耳音響放射 (TEOAE) および歪成分耳音響放射 (DPOAE) を測定した. TEOAEはnon-linear click刺激で測定し, 反応全体のtotal echo power (TEP) と中音域 (1000~2000Hz) 成分のfiltered echo power (FEP) を検討指標とした. DPOAEはF2=1000, 1500, 2000Hzの3周波数で入出力曲線を記録し, 曲...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 104; no. 6; pp. 682 - 693
Main Authors 楠木, 誠, 鵜山, 太一, 久内, 一史, 上野, 慶太, 陽川, 知江, 坂下, 哲史, 久保, 武志, 和田, 匡史, 山根, 英雄, 柴田, 敏之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2001
日本耳鼻咽喉科学会
Subjects
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.104.682

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Summary:グリセロールテストの際に耳音響放射 (OAE) を蝸牛機能のモニタリング検査として利用することの臨床的有用性について検討した. 対象はメニエール病症例22例22耳で, グリセロールテスト前後に誘発耳音響放射 (TEOAE) および歪成分耳音響放射 (DPOAE) を測定した. TEOAEはnon-linear click刺激で測定し, 反応全体のtotal echo power (TEP) と中音域 (1000~2000Hz) 成分のfiltered echo power (FEP) を検討指標とした. DPOAEはF2=1000, 1500, 2000Hzの3周波数で入出力曲線を記録し, 曲線上の最大出力レベルと検出閾値を指標とした入出力曲線の変化に基づいて評価した. 変化所見の判定では, 聴力正常耳の2回のOAE測定データから設定した測定誤差の基準を超える各指標値の変化を有意とし, 蝸牛機能の改善を示す変化を陽性改善所見とした. グリセロールテストの結果にかかわらず, 中音域 (1000, 2000Hz) の純音聴力閾値に改善があれば, 両OAEともに陽性改善所見が認められたが, 聴力改善がみられなくてもOAEで陽性所見が得られる場合があった. TEOAEではTEPよりもFEPで陽性所見が得られることが多かった. DPOAEでは3周波数のうち2000Hzのみで所見陽性となることはなかった. 両OAEの改善所見の陽性率はともに高かったが, 特にDPOAEでは聴力改善の有無にかかわらず極めて高率であった. 今回の検討より, OAEはグリセロールテストの際の蝸牛機能の変化を純音聴力検査よりも鋭敏に捉えることができることが判明した. またTEOAEの指標としてはFEPが適当であり, DPOAEは1000Hzと1500Hzを測定し評価するのが実際的と考えられたが, 内リンパ水腫診断検査としての感度の高さを考えるとTEOAEよりもDPOAEの方が実際の応用には適していると考えられた. したがって, OAEをグリセロールテストの補助検査として利用することは臨床的に非常に有用であり, 内リンパ水腫の診断率の向上が期待できると結論した.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.104.682