下咽頭がんにおける患者自身による治療法の選択に関する研究

下咽頭がん患者57例に病状や治療法, 副作用, 予後などを説明して患者自身に治療法を選択させた. 結果として, 初回治療として放射線治療を選択する例が有意に増加した. 2例は他病院での治療を希望し, 速やかに転院した. 91歳T4N3M0の1例はがん治療を全く行わなかった. インフォームドコンセントに要する時間が増え, 初診から治療開始までの期間が長くなった. 放射線化学療法後の残存再発時の手術拒否例はむしろ増加した. 再発例や死亡例での医師患者関係は良好であった. 3年生存率では患者の選択の結果で予後が悪くなったとは言えなかった. 患者の望む治療と医師が最善と考える治療が一致することが理想的...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 102; no. 7; pp. 918 - 924
Main Authors 高橋, 廣臣, 永井, 浩巳, 岡本, 牧人, 馬越, 智浩, 稲木, 勝英, 八尾, 和雄, 中山, 明仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1999
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.102.918

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Summary:下咽頭がん患者57例に病状や治療法, 副作用, 予後などを説明して患者自身に治療法を選択させた. 結果として, 初回治療として放射線治療を選択する例が有意に増加した. 2例は他病院での治療を希望し, 速やかに転院した. 91歳T4N3M0の1例はがん治療を全く行わなかった. インフォームドコンセントに要する時間が増え, 初診から治療開始までの期間が長くなった. 放射線化学療法後の残存再発時の手術拒否例はむしろ増加した. 再発例や死亡例での医師患者関係は良好であった. 3年生存率では患者の選択の結果で予後が悪くなったとは言えなかった. 患者の望む治療と医師が最善と考える治療が一致することが理想的であるが, 医師側が患者の望む治療法の開発に努力すべきであると考察した. 十分な情報の提示により, 患者に治療法を選択させることは予後の悪い下咽頭がんに対しても施行する意義があると結論した.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.102.918