耳硬化症における耳閉塞感の発症機序に関する検討
目的: 耳閉塞感の発症機序を明らかにする目的で, 難聴の病態が明らかな耳硬化症を対象としてその臨床所見, 検査所見と耳閉塞感との関係について検討した. 対象と方法: 手術所見より耳硬化症と診断された116例, 140耳とした. 耳閉塞感の有無は初診時の問診表及びカルテの記載より判定し, 耳閉塞感の有無と臨床所見, 検査所見との関係をretrospectiveに検討した. 結果: 耳閉塞感 (+) 群は44耳 (31%), 耳閉塞感 (-) 群は96耳 (69%) であった. 耳閉塞感と耳鳴との関係では耳閉塞感 (+) 群で耳鳴の合併率が高い傾向があった. 初診時の4周波数平均気導および骨導聴力...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 104; no. 3; pp. 187 - 191 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
2001
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.104.187 |
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Summary: | 目的: 耳閉塞感の発症機序を明らかにする目的で, 難聴の病態が明らかな耳硬化症を対象としてその臨床所見, 検査所見と耳閉塞感との関係について検討した. 対象と方法: 手術所見より耳硬化症と診断された116例, 140耳とした. 耳閉塞感の有無は初診時の問診表及びカルテの記載より判定し, 耳閉塞感の有無と臨床所見, 検査所見との関係をretrospectiveに検討した. 結果: 耳閉塞感 (+) 群は44耳 (31%), 耳閉塞感 (-) 群は96耳 (69%) であった. 耳閉塞感と耳鳴との関係では耳閉塞感 (+) 群で耳鳴の合併率が高い傾向があった. 初診時の4周波数平均気導および骨導聴力レベルは耳閉塞感 (+) 群で有意に低かった. 両群の平均聴力レベルの差は主に2kHz, 4kHzで明確であった. 低音域聴力レベルと高音域聴力レベルの差は耳閉塞感 (+) 群で有意に大きかった. 術後の耳閉塞感は44耳中34耳 (77%) で消失または軽快し, 特に聴力改善が良好な症例ほど耳閉塞感が消失, 軽快する傾向があった. 結論: 今回の検討で術後に聴力改善が良好な症例ほど耳閉塞感が消失, 軽快する症例が多い傾向があったことは耳硬化症における耳閉塞感がアブミ骨の固着による難聴に起因することを示している. 耳閉塞感 (+) 群の2kHzおよび4kHzの気導および骨導聴力レベルが有意に低く, 低音域と高音域聴力レベルの差が有意に大きかったことから, 入力音の低音域と高音域の音圧差が聴覚心理的に耳閉塞感という異常感覚の原因になっている可能性と, アブミ骨の固着が原因と考えられる2kHzを中心とする骨導聴力の低下 (Carhart notch) が耳閉塞感発症と関連している可能性が考えられた. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.104.187 |