下唇軟部組織に発生した微小な類上皮肉腫の1例

類上皮肉腫は2020年WHO軟部腫瘍分類では分化方向未確定の悪性軟部腫瘍群に分類される。病変の増大は緩徐であるが高率に局所再発と転移を生じる高悪性度の軟部肉腫であり,ほとんどの軟部肉腫と異なりリンパ節転移をきたしやすい傾向がある。根治的治療としては広範切除が第一選択となる。若年成人の上肢遠位に好発し口腔内に発生する例は極めてまれである。今回われわれは下唇軟部組織に発生した微小な類上皮肉腫の1例を経験したので報告する。 患者は62歳,女性。2018年6月頃より左側下唇の硬結を自覚した。初診時,左側下唇粘膜下に5mm径の弾性硬の小結節を認め境界はやや不明瞭であった。局所麻酔下に切開生検を施行したと...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 33; no. 3; pp. 113 - 118
Main Authors 小川, 千晴, 莇生田, 整治, 宮下, 英高, 元井, 亨, 大山, 定男, 臼田, 慎, 内田, 育宏, 寺尾, 保信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2021
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.33.113

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Summary:類上皮肉腫は2020年WHO軟部腫瘍分類では分化方向未確定の悪性軟部腫瘍群に分類される。病変の増大は緩徐であるが高率に局所再発と転移を生じる高悪性度の軟部肉腫であり,ほとんどの軟部肉腫と異なりリンパ節転移をきたしやすい傾向がある。根治的治療としては広範切除が第一選択となる。若年成人の上肢遠位に好発し口腔内に発生する例は極めてまれである。今回われわれは下唇軟部組織に発生した微小な類上皮肉腫の1例を経験したので報告する。 患者は62歳,女性。2018年6月頃より左側下唇の硬結を自覚した。初診時,左側下唇粘膜下に5mm径の弾性硬の小結節を認め境界はやや不明瞭であった。局所麻酔下に切開生検を施行したところ類上皮肉腫の病理組織診断であった。CT,MRI,PET-CTでは頸部および遠隔転移は認めなかった。2019年2月,全身麻酔下に下唇広範切除,左根治的頸部郭清術変法(typeⅢ),左側前腕皮弁再建術を施行した。その後,当院骨軟部腫瘍科にてAI療法(Doxorubicin+Ifosfamide)を5コース施行した。現在術後2年経過し,再発転移はなく経過良好である。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.33.113