クロピドグレルの治療抵抗機序がCYP2C19遺伝子多型解析で示された1例

【要旨】チエノピリジン系抗血小板薬であるクロピドグレルは, 経皮的冠動脈インターベンションのステント留置例において, 亜急性血栓性閉塞の予防に寄与する重要な薬剤である. しかし, クロピドグレルは肝臓において薬物代謝酵素の1つであるCYP2C19により代謝され薬効を発揮するため, その代謝活性が低い場合効果を示さないことがある. 今回われわれは, クロピドグレル服用中でステント留置後に亜急性血栓性閉塞を繰り返した症例を経験した. この症例に対し, VerifyNow(R)P2Y12を用いてチエノピリジン系薬剤に特異的な血小板凝集活性を測定したところ, クロピドグレルの薬効がまったく認められなか...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 16; no. 4; pp. 595 - 598
Main Authors 柴田啓智, 坂本知浩, 丸山徹, 田上治美, 飛野幸子, 中尾浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床救急医学会 01.08.2013
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【要旨】チエノピリジン系抗血小板薬であるクロピドグレルは, 経皮的冠動脈インターベンションのステント留置例において, 亜急性血栓性閉塞の予防に寄与する重要な薬剤である. しかし, クロピドグレルは肝臓において薬物代謝酵素の1つであるCYP2C19により代謝され薬効を発揮するため, その代謝活性が低い場合効果を示さないことがある. 今回われわれは, クロピドグレル服用中でステント留置後に亜急性血栓性閉塞を繰り返した症例を経験した. この症例に対し, VerifyNow(R)P2Y12を用いてチエノピリジン系薬剤に特異的な血小板凝集活性を測定したところ, クロピドグレルの薬効がまったく認められなかった. そこで, 本患者のCYP2C19遺伝子多型解析を行ったところ, クロピドグレルの代謝能力が低いタイプであることが判明した. この結果をふまえ, クロピドグレルをチクロピジンに変更し, VerifyNow(R)P2Y12により抗血小板活性を測定したところ, 薬効が認められるようになった結果, 合併症を出現せずに経過している. 今回の知見で示したように, VerifyNow(R)P2Y12とCYP2C19の遺伝子多型解析の組み合わせは, 今後のクロピドグレル適正使用に貢献できるものと考える.
ISSN:1345-0581
DOI:10.11240/jsem.16.595