高齢化時代におけるがん診療の現状と将来展望
「抄録」がんは1981年に死亡原因の第1位となりさまざまな対策が取られてきたが, 依然として国民の生命および健康にとって重大な脅威となっている. 2012年のがん死亡者数は全死亡125.6万人の約3分の1にあたる36.0万人であった. そのうち65歳以上の高齢者は29.4万人(全がん死亡の81.4%), 75歳以上に限っても20.7万人(全がん死亡の57.2%)と過半数を占めている. まさに高齢化がん多死社会の到来である. 一方で, がん対策推進基本計画の重点目標である「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率20%減)」では後期高齢者は除外されている. また, 検診率50%を目標と...
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Published in | 総合健診 Vol. 44; no. 2; pp. 341 - 348 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本総合健診医学会
2017
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Summary: | 「抄録」がんは1981年に死亡原因の第1位となりさまざまな対策が取られてきたが, 依然として国民の生命および健康にとって重大な脅威となっている. 2012年のがん死亡者数は全死亡125.6万人の約3分の1にあたる36.0万人であった. そのうち65歳以上の高齢者は29.4万人(全がん死亡の81.4%), 75歳以上に限っても20.7万人(全がん死亡の57.2%)と過半数を占めている. まさに高齢化がん多死社会の到来である. 一方で, がん対策推進基本計画の重点目標である「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率20%減)」では後期高齢者は除外されている. また, 検診率50%を目標とするがん検診では, 集計対象は40歳~69歳に絞られている一方, 対策型がん検診は年齢上限が設定されていないという矛盾がある. 高齢者における検診の利益と不利益のバランスを考慮した適正な対象とすべきであろう. 高齢者に対する治療の考え方は, 個々の患者におけるがん死の時期が平均余命より前か否かで分かれる. 平均余命前と予想される場合は, 身体機能や日常生活活動度, 認知機能, 療養に対する意欲などを評価し, 問題がなければ非高齢者と同様の標準治療を行う. 重大な問題がある場合は, 対症療法や緩和ケアを選択し, 問題があるが何らかの治療が可能な場合は, 個々の患者に適した治療法を選択する. 今日では高齢者に特有のがん種の存在や増殖様式が明らかになりつつあることから, 高齢者がんの特性を踏まえた新たな低侵襲治療の開発が望まれている. 2016年より「がん登録推進法」が実施され, 全国がん登録が始まった. がんの罹患率や生存率が実測値として把握可能となる. また, 院内がん登録との両輪で, 高齢者がんのより詳細な実態が明らかになることが期待される. 今後は検診データやレセプトデータとの統合によって予防・治療の目標設定やアウトカム評価に資すること望まれる. |
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ISSN: | 1347-0086 |
DOI: | 10.7143/jhep.44.341 |