von Willebrand病患者に発生した下顎歯肉癌に対する再建手術の一経験
von Willebrand病(von Willebrand disease:vWD)はvW因子(von Willebrand factor:vWF)の量的減少または質的異常に基づく血小板機能低下症であり,手術時の止血困難が生じうる疾患である。われわれは,vWDを有する下顎歯肉癌患者に対して周術期の血液凝固因子補充療法により再建手術時の止血を安全に行えた1例を経験したので報告する。患者は63歳男性で,肺癌の既往があり,その治療時にvWDと診断された。当科初診時,vWFリストセチンコファクター活性(vVF:RCo)6%未満,vWF抗原量(vWF:Ag)26%,第Ⅷ因子活性(FⅧ:C) 75.1%...
Saved in:
Published in | 日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 33; no. 4; pp. 179 - 185 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
2021
日本口腔腫瘍学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-5988 1884-4995 |
DOI | 10.5843/jsot.33.179 |
Cover
Summary: | von Willebrand病(von Willebrand disease:vWD)はvW因子(von Willebrand factor:vWF)の量的減少または質的異常に基づく血小板機能低下症であり,手術時の止血困難が生じうる疾患である。われわれは,vWDを有する下顎歯肉癌患者に対して周術期の血液凝固因子補充療法により再建手術時の止血を安全に行えた1例を経験したので報告する。患者は63歳男性で,肺癌の既往があり,その治療時にvWDと診断された。当科初診時,vWFリストセチンコファクター活性(vVF:RCo)6%未満,vWF抗原量(vWF:Ag)26%,第Ⅷ因子活性(FⅧ:C) 75.1%と低下していた。右側下顎歯肉扁平上皮癌(T4bN2bM0)に対して,術前化学療法後に再建手術を計画し,手術2日前から乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子製剤2,000単位/bodyで投与を開始した。手術前日にはvWF:RCo 158%,vWF:Ag 275%,FⅧ:C 110%に上昇した。頸部郭清術,下顎骨区域切除術,チタンプレートと腹直筋皮弁による再建術を行ったが,術中の止血は問題なく,術後の出血もなかった。 |
---|---|
ISSN: | 0915-5988 1884-4995 |
DOI: | 10.5843/jsot.33.179 |