下顎骨内に迷入したインプラント体を撤去した2症例

上顎骨と比較して下顎骨は硬く,インプラントの初期固定が得られやすいと考えられている.しかし,パノラマエックス線やCTの画像所見にて,欠損部の骨梁に顕著な透過像が認められなかったにもかかわらず,インプラント体の迷入を経験した.また,他院にて迷入したインプラント体を撤去する機会を得たため,これら2症例について報告する.症例1は52歳の女性,低速でインプラントを埋入中に迷入が生じた.印象用のガイドピンを使用し,形成窩から引き上げてインプラント体を撤去した.症例2は35歳の女性,晩期残存した乳歯の抜去後インプラントを即時埋入し,トルクレンチで深度調整中にインプラント体が迷入した.迷入後のCT画像データ...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 37; no. 2; pp. 186 - 191
Main Authors 吉武, 博美, 成松, 生枝, 眞鍋, 佳菜子, 吉武, 義泰, 鮎川, 保則, 松下, 恭之, 伊東, 隆利, 佐々木, 匡理, 橋口, 有真, 加来, 敏男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 30.06.2024
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.37.186

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Summary:上顎骨と比較して下顎骨は硬く,インプラントの初期固定が得られやすいと考えられている.しかし,パノラマエックス線やCTの画像所見にて,欠損部の骨梁に顕著な透過像が認められなかったにもかかわらず,インプラント体の迷入を経験した.また,他院にて迷入したインプラント体を撤去する機会を得たため,これら2症例について報告する.症例1は52歳の女性,低速でインプラントを埋入中に迷入が生じた.印象用のガイドピンを使用し,形成窩から引き上げてインプラント体を撤去した.症例2は35歳の女性,晩期残存した乳歯の抜去後インプラントを即時埋入し,トルクレンチで深度調整中にインプラント体が迷入した.迷入後のCT画像データから3D模型を作製後,下歯槽神経の損傷に配慮した骨削合のデザインを検討し,骨を切り出してインプラント体を撤去した.2症例ともに後遺症は認めなかった.術前のパノラマエックス線写真やCTなどの画像所見からインプラント体の迷入を推測できる場合もある.しかし,予測が困難な場合は術中の埋入窩形成時の手指感覚から形成アプローチを勘案することが重要である.迷入したインプラント体の撤去には,埋入窩から取り出すcrestal approachと下顎骨の外側の骨を切離して取り出すlateral approachの2つの方法がある.これらはCT所見からインプラント体と神経の走向関係を把握したうえで適切に選択し,可能なかぎり早い時期にインプラント体の撤去を行うことが望ましいと考える.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.37.186