脳ドック健診におけるAIの役割

「抄録」一般社団法人日本脳ドック学会は, 未破裂脳動脈瘤や無症候性脳梗塞など無症候性脳疾患の早期発見早期治療を目的として, 世界では例を見ない日本独自の脳健診システムである. 現在は, 脳卒中と認知症予防の医学会として認知症予防にも力を入れている. 日本には1990年台から脳ドック健診の画像データがあり, 健常人脳画像エビデンスの宝庫といえる. しかし, 全てがデータベースとして登録されているわけではなく, 現在データベース化されているデータを集積研究している. 例えば, 未破裂脳動脈瘤を脳ドック健診でたくさん発見し, 治療していけばくも膜下出血は減少するのではないかと考えられていた. しかし...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in総合健診 Vol. 51; no. 2; pp. 242 - 251
Main Author 井川房夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本総合健診医学会 10.03.2024
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「抄録」一般社団法人日本脳ドック学会は, 未破裂脳動脈瘤や無症候性脳梗塞など無症候性脳疾患の早期発見早期治療を目的として, 世界では例を見ない日本独自の脳健診システムである. 現在は, 脳卒中と認知症予防の医学会として認知症予防にも力を入れている. 日本には1990年台から脳ドック健診の画像データがあり, 健常人脳画像エビデンスの宝庫といえる. しかし, 全てがデータベースとして登録されているわけではなく, 現在データベース化されているデータを集積研究している. 例えば, 未破裂脳動脈瘤を脳ドック健診でたくさん発見し, 治療していけばくも膜下出血は減少するのではないかと考えられていた. しかし, 現在では脳ドック健診で発見される未破裂脳動脈瘤は限られており, これらを治療してもくも膜下出血を減少させることは困難で, むしろ脳ドック健診により生活習慣を改善することがくも膜下出血頻度の減少に寄与することがわかってきた. 人工知能(artificial intelligence: AI)は, 教師データから正解を導き出す手法で脳ドック健診における画像診断の補助や将来の脳梗塞や認知症リスクを予想するには適しており, すでに実用されている. 現在, 主に脳の萎縮や, 特に海馬の萎縮を測定するAIが実用化されており, 我々は未破裂脳動脈瘤診断補助AI, 脳白質変化のAI等を開発している. 一方, 実際の脳ドックではMRI画像データ以外にも, 既往歴, 生活習慣, 採血データ, 心電図, 頚動脈超音波検査, 認知機能検査等が行われる. これらのデータを統合してAIによる予測することも可能となりうる. 本稿では, 人工知能の画像診断支援への応用とAIによる脳ドック診断の可能性について解説する.
ISSN:1347-0086
DOI:10.7143/jhep.51.242