腹腔内出血で発症した膵尾部退形成癌の1例

症例は61歳,男性.突然の腹部膨満を認め,近医より当院に紹介となった.造影CTで膵尾部から脾臓にわたる多房性嚢胞性病変を疑う腫瘤影と周囲への造影剤血管外漏出像を認め,緊急血管造影下に塞栓術を施行した.一時的な止血は得られたが,再出血の危険性が高いと判断し,第3病日に膵体尾部切除を施行した.術中,横行結腸浸潤を疑う所見を認めたため,横行結腸切除を併施した.病理組織学的診断は,脾臓と横行結腸に浸潤した膵退形成癌であり,その急速な進展に伴って腹腔内出血を初発症状として発症したと考えられた.腹腔内出血が初発症状となる膵退形成癌は稀ではあるが,急速な進展に伴った症状の一つと思われ,迅速な対応が必要となる...

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Published in膵臓 Vol. 37; no. 2; pp. 87 - 95
Main Authors 高長, 紘平, 林, 泰寛, 所, 智和, 倉田, 徹, 天谷, 公司, 加治, 正英, 石澤, 伸, 前田, 基一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本膵臓学会 28.04.2022
日本膵臓学会
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Summary:症例は61歳,男性.突然の腹部膨満を認め,近医より当院に紹介となった.造影CTで膵尾部から脾臓にわたる多房性嚢胞性病変を疑う腫瘤影と周囲への造影剤血管外漏出像を認め,緊急血管造影下に塞栓術を施行した.一時的な止血は得られたが,再出血の危険性が高いと判断し,第3病日に膵体尾部切除を施行した.術中,横行結腸浸潤を疑う所見を認めたため,横行結腸切除を併施した.病理組織学的診断は,脾臓と横行結腸に浸潤した膵退形成癌であり,その急速な進展に伴って腹腔内出血を初発症状として発症したと考えられた.腹腔内出血が初発症状となる膵退形成癌は稀ではあるが,急速な進展に伴った症状の一つと思われ,迅速な対応が必要となると考えられた.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.37.87