上大静脈症候群の治療を契機に侵襲性真菌症を発症した舌扁平上皮癌の1例

侵襲性真菌症(以下IFI)は,免疫抑制状態を背景に発症する全身性真菌感染症であり,上大静脈症候群(以下SVCS)は,上大静脈の閉塞により生じる症候群である。今回われわれは,舌癌に起因するSVCSの治療を契機にIFIを発症した症例を経験したので,その概要を報告する。症例は67歳,男性。舌扁平上皮癌(cT3N2bM0)に対して舌可動部半側切除術,左側全頸部郭清術変法および術後補助療法を施行した。術後補助療法5か月後に頸部領域にリンパ節転移を認めたため,ニボルマブの投与を開始した。ニボルマブ使用2年後には上縦隔領域にリンパ節転移を認めたため,化学療法を予定したが,上大静脈の狭窄による頭頸部浮腫と倦怠...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 35; no. 3; pp. 105 - 113
Main Authors 笹原, 庸由, 小林, 武仁, 飯野, 光喜, 北畠, 健一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2023
日本口腔腫瘍学会
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.35.105

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Summary:侵襲性真菌症(以下IFI)は,免疫抑制状態を背景に発症する全身性真菌感染症であり,上大静脈症候群(以下SVCS)は,上大静脈の閉塞により生じる症候群である。今回われわれは,舌癌に起因するSVCSの治療を契機にIFIを発症した症例を経験したので,その概要を報告する。症例は67歳,男性。舌扁平上皮癌(cT3N2bM0)に対して舌可動部半側切除術,左側全頸部郭清術変法および術後補助療法を施行した。術後補助療法5か月後に頸部領域にリンパ節転移を認めたため,ニボルマブの投与を開始した。ニボルマブ使用2年後には上縦隔領域にリンパ節転移を認めたため,化学療法を予定したが,上大静脈の狭窄による頭頸部浮腫と倦怠感が出現した。放射線治療,ステロイド投与により症状の改善を認めたが,化学療法開始2か月後に抗菌薬に反応しない発熱を認めた。血液培養で真菌は検出されなかったが,ステロイドの長期使用,肺の結節性病変,β-Dグルカンの上昇を認めたため,IFI(Probable diagnosis)と診断した。ボリコナゾールを開始したところ,症状の改善を認めた。その後,化学療法を再開したが,全身状態が悪化しIFI発症から5か月後に死亡した。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.35.105