本態性血小板血症患者に発生した口底癌の1例

本態性血小板血症(ET)は,骨髄中の造血幹細胞の異常により血小板数が増加する骨髄増殖性腫瘍の一つである。出血と血栓症を起こすため,周術期においては血小板数のコントロールと抗血栓療法が重要である。今回われわれは,ET患者に発生した口底癌に対して,手術を行った症例を経験したので報告する。患者は70歳,男性。右側口底部の腫瘍を指摘され,2016年9月に当院へ紹介受診した。生検結果は,扁平上皮癌であり,画像検査から臨床診断は,口底癌T2N1M0となった。2004年にETと診断され,ヒドロキシカルバミド(HU)とジピリダモールで治療されてきた。術前採血で血小板数は94.1×104/μlであったため,HU...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 30; no. 4; pp. 159 - 166
Main Authors 長谷川, 稔洋, 宗像, 花楠子, 小川, 千晴, 家崎, 憲博, 莇生田, 整治, 宮下, 英高, 相馬, 智也, 福田, 仁, 吉田, 俊一, 内田, 育宏, 寺尾, 保信, 大山, 定男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2018
日本口腔腫瘍学会
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Summary:本態性血小板血症(ET)は,骨髄中の造血幹細胞の異常により血小板数が増加する骨髄増殖性腫瘍の一つである。出血と血栓症を起こすため,周術期においては血小板数のコントロールと抗血栓療法が重要である。今回われわれは,ET患者に発生した口底癌に対して,手術を行った症例を経験したので報告する。患者は70歳,男性。右側口底部の腫瘍を指摘され,2016年9月に当院へ紹介受診した。生検結果は,扁平上皮癌であり,画像検査から臨床診断は,口底癌T2N1M0となった。2004年にETと診断され,ヒドロキシカルバミド(HU)とジピリダモールで治療されてきた。術前採血で血小板数は94.1×104/μlであったため,HUを増量し,手術当日は50.4×104/μlにコントロールした。ジピリダモールは術前から休薬し,2016年10月に気管切開術,機能的頸部郭清術,口底舌部分切除術,前腕皮弁再建術を実施した。術後は,血小板数が上昇してきたところでHUを再開,出血量が減少してきたところでダルテパリンナトリウムを開始した。血小板数のコントロールと抗血栓療法を行うことで周術期において合併症を起こすことはなかった。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.30.159