抗血栓薬を内服している患者への対応

抗血栓療法(抗血小板薬・抗凝固薬)を受けている患者は多く,我々の歯科外来においても多く来院する.これらの患者の歯科インプラント治療においては,抗血栓療法および抗血栓薬に関する十分な理解と対応が重要である.本稿では血栓症,塞栓症,および抗血栓療法に関して概説するとともに,抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版を紹介した.このガイドラインでは,基本的に経口抗血栓薬を継続下に抜歯を行うこと,および確実な局所止血処置を行うことが提案されている.しかしながら,歯科インプラント手術に関して作成されたものではない.インプラント手術においては,条件の整った顎堤における数本の埋入手術や歯肉骨膜剥離...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 37; no. 4; pp. 269 - 276
Main Authors 酒井, 洋徳, 栗田, 浩, 山田, 慎一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 31.12.2024
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.37.269

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Summary:抗血栓療法(抗血小板薬・抗凝固薬)を受けている患者は多く,我々の歯科外来においても多く来院する.これらの患者の歯科インプラント治療においては,抗血栓療法および抗血栓薬に関する十分な理解と対応が重要である.本稿では血栓症,塞栓症,および抗血栓療法に関して概説するとともに,抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版を紹介した.このガイドラインでは,基本的に経口抗血栓薬を継続下に抜歯を行うこと,および確実な局所止血処置を行うことが提案されている.しかしながら,歯科インプラント手術に関して作成されたものではない.インプラント手術においては,条件の整った顎堤における数本の埋入手術や歯肉骨膜剥離の小さな手術などでは,普通抜歯と同様に確実な止血処置が行える条件で,抗血栓薬内服継続下での処置が可能であろう.一方,骨造成を伴う処置では広範な歯肉骨膜剥離を伴うことが多く外科侵襲は大きく,かつ広範囲に及ぶ.この場合では,圧迫止血の範囲,確実な圧迫力の確保,出血の遁路,周囲の蜂窩織の存在など問題が多く,注意深い確実な止血処置が肝要となる.これらの問題点に対する対応策の実施と,予期せぬ出血に対応できる医療機関との連携が必要であろう.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.37.269