簡易視野検査を導入した成人眼検診の試み
「抄録」【目的】日本人の中途失明原因の第一位は緑内障であり, 多くは正常眼圧緑内障と言われている. 日本緑内障学会で行った疫学調査(多治見スタディ)によると, 40歳以上の日本人の5%が緑内障でありうち72%が正常眼圧緑内障と報告されている. しかし, 緑内障発見に有効である眼底検査は, 2008年度以降の特定健康診査では, ごく限られた対象者にしか実施されていない. 近年安価で, 小型軽量な簡易視野計(Frequency Doubling Technology Screener; FDT)が開発されたため, 成人眼検診として出張検診で眼底検査とFDT検査を併用した場合の効果と有用性の検証を行...
Saved in:
Published in | 総合健診 Vol. 44; no. 2; pp. 387 - 397 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本総合健診医学会
2017
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 「抄録」【目的】日本人の中途失明原因の第一位は緑内障であり, 多くは正常眼圧緑内障と言われている. 日本緑内障学会で行った疫学調査(多治見スタディ)によると, 40歳以上の日本人の5%が緑内障でありうち72%が正常眼圧緑内障と報告されている. しかし, 緑内障発見に有効である眼底検査は, 2008年度以降の特定健康診査では, ごく限られた対象者にしか実施されていない. 近年安価で, 小型軽量な簡易視野計(Frequency Doubling Technology Screener; FDT)が開発されたため, 成人眼検診として出張検診で眼底検査とFDT検査を併用した場合の効果と有用性の検証を行った. 【方法】2012年度秋に定期健康診断を実施している某企業の従業員2,392名のうち, 同意を得て検診を行った892名(男738名, 女154名)に成人眼検診(問診, 視力, 眼底検査, FDT検査)を実施した. 判定は, 日本緑内障学会のガイドラインに準拠した. また, 緑内障疑いで垂直CD比(0. 7≦垂直CD比<0.9)かつFDT検査が陰性の者を継続管理者として区分し, 精密検査対象者には眼科受診を勧奨した. 【結果】成人眼検診で所見が見られた(要精密検査73名, 要医療12名) 85名のうち, 精密検査を受診した59名から, 緑内障7名を発見した. 40歳以上の成人眼検診結果では, 緑内障有病率(補正後)は1.67%となった. 成人眼検診の緑内障(緑内障疑いおよび緑内障関連病を含む)に対する陽性的中率は89.5%となり緑内障の早期発見に有用であることが判った. また, 眼底検査に所見が無く簡易視野検査のみに所見を認めた11名の精密検査結果は, 受診した9名中7名の内訳は緑内障1名, 網膜神経線維束欠損1名, 黄斑変性症3名, 乳頭陥凹拡大1名, 軽微な網膜異常1名であった. 【結論】成人眼検診は, 眼底検査では発見できなかった疾患を簡易視野検査で発見できた. また, 緑内障発見に対する感度も高く, 精密検査対象者の絞込みができ, 有用な検診方法であることが認められた. |
---|---|
ISSN: | 1347-0086 |
DOI: | 10.7143/jhep.44.387 |