伝送12誘導心電図とドクターヘリの組み合わせが奏功したST上昇型心筋梗塞の1例

症例は62歳男性。車の運転中に突然の前胸部灼熱感を自覚し,救急要請となった。救急指令員は救急車の出動に続いてドクターヘリの出動も要請した。救急隊(EMS)は現場で12誘導心電図(12-lead ECG)を記録し,当院へ伝送を行った。そのECGでST上昇を示し,フライトドクターが現場で行った心エコーでECG所見に一致した壁運動低下を認めた。ST上昇型心筋梗塞の診断で,硝酸イソソルビドとアスピリンの投与後に当院へ搬送し,緊急冠動脈造影で左前下行枝に99%狭窄を認め,同部位にカテーテル治療を行って,再灌流に成功した。入院後のCKの最高値は正常域内で心筋障害はほぼ認めなかった。発症からEMSの接触まで...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 21; no. 5; pp. 685 - 688
Main Authors 大西, 俊彦, 菊池, 仁, 小野, 一之, 魚住, 翠子, 菊地, 研, 和氣, 晃司, 鍛, 良之, 齋藤, 豊, 越路, 暢生, 正和, 泰斗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 31.10.2018
日本臨床救急医学会
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.21.685

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Summary:症例は62歳男性。車の運転中に突然の前胸部灼熱感を自覚し,救急要請となった。救急指令員は救急車の出動に続いてドクターヘリの出動も要請した。救急隊(EMS)は現場で12誘導心電図(12-lead ECG)を記録し,当院へ伝送を行った。そのECGでST上昇を示し,フライトドクターが現場で行った心エコーでECG所見に一致した壁運動低下を認めた。ST上昇型心筋梗塞の診断で,硝酸イソソルビドとアスピリンの投与後に当院へ搬送し,緊急冠動脈造影で左前下行枝に99%狭窄を認め,同部位にカテーテル治療を行って,再灌流に成功した。入院後のCKの最高値は正常域内で心筋障害はほぼ認めなかった。発症からEMSの接触まで28分,door-to-balloon 時間は38分,EMS-to-balloon 時間は78分,発症から再灌流までの時間は106分であった。本症例は,救急車での搬送に40分以上を要する地域でありながら,伝送ECGとドクターヘリを組み合わせることで,発症から再灌流までの時間を120分以内に短縮でき,心筋障害を最小限にすることができた。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.21.685