蚊が媒介する病原体,特に蚊のウイルス感受性と媒介能に関する研究

筆者が学部の卒論で初めて蚊を実験材料にしてから,約50年が経過した.この間,蚊の研究が中断されたことも多々あった.しかし,著者は原虫など他の実験材料の研究をしているときでも,蚊の研究をあきらめなかった.主に研究した蚊は,ヒトスジシマカAedes albopictus等のいわゆる「ヤブカ」であった.これらの蚊を用いて,その生態,新規殺虫剤に対する感受性,デング・ウエストナイル・チクングニア・ジカウイルス等のアルボウイルスに対する感受性を研究し,次世代シーケンサー(NGS)を用いてデングウイルス感染蚊のトランスクリプトーム解析を行った.研究を続けるために,国内の4大学を異動した.その間,分子生物学...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 75; no. 2; pp. 33 - 45
Main Author 江下, 優樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 25.06.2024
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ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.75.33

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Summary:筆者が学部の卒論で初めて蚊を実験材料にしてから,約50年が経過した.この間,蚊の研究が中断されたことも多々あった.しかし,著者は原虫など他の実験材料の研究をしているときでも,蚊の研究をあきらめなかった.主に研究した蚊は,ヒトスジシマカAedes albopictus等のいわゆる「ヤブカ」であった.これらの蚊を用いて,その生態,新規殺虫剤に対する感受性,デング・ウエストナイル・チクングニア・ジカウイルス等のアルボウイルスに対する感受性を研究し,次世代シーケンサー(NGS)を用いてデングウイルス感染蚊のトランスクリプトーム解析を行った.研究を続けるために,国内の4大学を異動した.その間,分子生物学的ツールを用いて,アルボウイルスの研究,原虫のワクチン開発,媒介昆虫の疫学研究を行った.これらの異なる分野における新しい技術や研究アイデアは,筆者が日本で蚊の研究を再開する際に大いに役立った.本稿では,蚊のウイルス感受性と媒介能力,そしてそれに至る研究についてまとめた.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.75.33