血液浄化と部分的血栓除去にて救命しえた消化管穿孔に伴った急性腹部大動脈閉塞症の1例

症例は45歳男性。2日前より腹痛が出現し,その後両下肢が動かなくなり当院へ搬送された。腹部全体に圧痛,筋性防御を認め,両下肢では大腿動脈以下で拍動を触知せず知覚,運動障害を認めた。CT検査で,消化管穿孔に急性大動脈閉塞症を合併したものと診断した。強いアシドーシスを示し,血清カリウム値は7.0mmol/Lと高くその後も上昇した。救肢困難と判断したが,血栓を放置した場合には大腿切断端の治癒が得られないと考えた。一方で,血栓除去による再灌流障害も危惧された。そこで,術前から血液浄化を導入し穿孔部には大綱充填術を行い,両側腸骨動脈,大腿深動脈に対してのみ血栓除去術を行った。術中術後も血液浄化を行い,循...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 16; no. 2; pp. 136 - 139
Main Authors 中田, 俊介, 堀内, 和隆, 中野, 浩, 長谷川, 雅彦, 佐藤, 敏, 湯浅, 毅, 浅岡, 峰雄, 保浦, 賢三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 30.04.2013
日本臨床救急医学会
Subjects
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.16.136

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Summary:症例は45歳男性。2日前より腹痛が出現し,その後両下肢が動かなくなり当院へ搬送された。腹部全体に圧痛,筋性防御を認め,両下肢では大腿動脈以下で拍動を触知せず知覚,運動障害を認めた。CT検査で,消化管穿孔に急性大動脈閉塞症を合併したものと診断した。強いアシドーシスを示し,血清カリウム値は7.0mmol/Lと高くその後も上昇した。救肢困難と判断したが,血栓を放置した場合には大腿切断端の治癒が得られないと考えた。一方で,血栓除去による再灌流障害も危惧された。そこで,術前から血液浄化を導入し穿孔部には大綱充填術を行い,両側腸骨動脈,大腿深動脈に対してのみ血栓除去術を行った。術中術後も血液浄化を行い,循環動態を維持することができた。急性大動脈閉塞症の治療方針は,全身合併症と虚血の重症度から判断し,再灌流障害が強く懸念される症例においても早期から血液浄化を導入し,たとえ救肢できなくとも救命できるかを判断するべきである。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.16.136