根治切除を行った食道癌舌転移の1例

われわれは,口腔転移を生じた食道癌の症例報告と文献的考察を行った。症例は68歳男性,食道癌の診断にて他院で放射線治療を受け寛解,その後舌の違和感を主訴に当科受診された。舌には10mm大の腫瘍を認め,全身検索の結果,転移性舌悪性腫瘍と診断した。舌腫瘍の増大はQOL低下の原因となるため舌部分切除術を施行した。全身状態悪化にて死亡されるまで再発は認めなかった。本邦では,食道癌の口腔への転移は過去に16例の報告がある。本症例を含めた17例では,原発巣再発の発見から口腔転移までの期間は3.1±2.2か月(mean±SD),口腔転移後の生存期間は5.7±4.2か月(顎骨:6.8±4.9か月,口腔軟組織:5...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 35; no. 1; pp. 17 - 23
Main Authors 鵜澤, 成一, 上野, 祥夫, 森田, 展雄, 網野, かよ子, 今井, 智章, 仁木, 敦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2023
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.35.17

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Summary:われわれは,口腔転移を生じた食道癌の症例報告と文献的考察を行った。症例は68歳男性,食道癌の診断にて他院で放射線治療を受け寛解,その後舌の違和感を主訴に当科受診された。舌には10mm大の腫瘍を認め,全身検索の結果,転移性舌悪性腫瘍と診断した。舌腫瘍の増大はQOL低下の原因となるため舌部分切除術を施行した。全身状態悪化にて死亡されるまで再発は認めなかった。本邦では,食道癌の口腔への転移は過去に16例の報告がある。本症例を含めた17例では,原発巣再発の発見から口腔転移までの期間は3.1±2.2か月(mean±SD),口腔転移後の生存期間は5.7±4.2か月(顎骨:6.8±4.9か月,口腔軟組織:5.4±3.9か月)であり,食道原発巣の再発群では4.0±2.1か月,非再発群では8.8±5.8か月であった。口腔転移部位は舌,歯肉と顎骨に多く認めた。治療方針としては,舌腫瘍の場合は外科的切除,歯肉や顎骨腫瘍の場合は化学療法や放射線療法が選択される傾向にあった。これらの治療方針は終末期のQOL向上や維持を考えて決定されていた。また,食道原発の制御が良好である非再発症例においても,転移巣制御が不良であれば,再発症例同様の短い生存期間となるため,根治的な治療が可能な症例であれば積極的に行うことが必要であると考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.35.17