アルコール依存症による低栄養によりWernicke-Korsakoff症候群を発症し治療に難渋した口底癌の治療経験

アルコール依存症を有する癌患者は,治療に際して病状や治療内容の理解が得られない場合が多く,標準治療の遂行が困難となる。家族の協力や他科との連携により,包括的に患者を導くことが重要である。今回われわれは,アルコール依存症を有し,治療に難渋した低栄養状態の口底癌の1例を経験したので報告する。患者は49歳男性,右側口底部の腫瘤を主訴に来院した。精査の結果,右側口底癌(T2N1M0)の診断となったが,患者と妻の強い希望により根治治療は行わず,S-1投与による姑息的治療を行う事となった。初診より1年1か月後,自宅で低栄養のため倒れており,救急搬送のうえ精査のため入院となった。電解質補正,栄養療法,ビタミ...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 30; no. 2; pp. 29 - 35
Main Authors 青木, 久美子, 今井, 裕一郎, 桐田, 忠昭, 山川, 延宏, 上山, 善弘, 高嶌, 森彦, 上田, 順宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2018
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.30.29

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Summary:アルコール依存症を有する癌患者は,治療に際して病状や治療内容の理解が得られない場合が多く,標準治療の遂行が困難となる。家族の協力や他科との連携により,包括的に患者を導くことが重要である。今回われわれは,アルコール依存症を有し,治療に難渋した低栄養状態の口底癌の1例を経験したので報告する。患者は49歳男性,右側口底部の腫瘤を主訴に来院した。精査の結果,右側口底癌(T2N1M0)の診断となったが,患者と妻の強い希望により根治治療は行わず,S-1投与による姑息的治療を行う事となった。初診より1年1か月後,自宅で低栄養のため倒れており,救急搬送のうえ精査のため入院となった。電解質補正,栄養療法,ビタミン補充を行うことで意識障害は回復したが,異常行動,異常言動等の精神症状は残存し,Wernicke-Korsakoff症候群と診断された。ビタミン投与の継続と,精神科による治療により精神症状は徐々に回復し,本人が口底癌に対する治療を希望したため,根治手術を施行した。口底癌は再発,転移を認めなかったが,術後2年3か月経過し,他病死された。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.30.29