考案した嚥下訓練法と声帯内転術により嚥下障害が改善した1例

脳幹梗塞後嚥下障害の摂食訓練中に,誤嚥による胸膜炎を併発した症例を報告する.訓練開始時嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing)で誤嚥のない安全な摂食条件を設定して,慎重に段階的摂食訓練を実施した.しかし,ピューレ食から咀嚼を必要とする食物形態に移行したところ,胸膜炎を発症した.24日間の絶飲食後のVF所見を参考に,奥舌を挙上して「き」と発音する構えを作り,喉頭挙上を促してから食塊を咽頭に送り込んで,食塊が喉頭蓋谷の位置にある段階で力強く嚥下するという,新しい訓練方法を考案した.声帯内転術施行後,この方法を用いて慎重に摂食訓練を再開し...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 11; no. 2; pp. 137 - 145
Main Authors 池上, 加奈子, 小島, 千枝子, 藤島, 一郎, 高橋, 博達
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 31.08.2007
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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Summary:脳幹梗塞後嚥下障害の摂食訓練中に,誤嚥による胸膜炎を併発した症例を報告する.訓練開始時嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing)で誤嚥のない安全な摂食条件を設定して,慎重に段階的摂食訓練を実施した.しかし,ピューレ食から咀嚼を必要とする食物形態に移行したところ,胸膜炎を発症した.24日間の絶飲食後のVF所見を参考に,奥舌を挙上して「き」と発音する構えを作り,喉頭挙上を促してから食塊を咽頭に送り込んで,食塊が喉頭蓋谷の位置にある段階で力強く嚥下するという,新しい訓練方法を考案した.声帯内転術施行後,この方法を用いて慎重に摂食訓練を再開した結果,トラブルの一因と考えられた咀嚼を必要とする食物形態まで摂食可能となり,胸膜炎発症前よりも高い摂食レベルに達した.トラブルの原因として,嚥下造影検査時には誤嚥がみられなくても,実際の臨床場面ではピューレ食を摂食している段階ですでに誤嚥していた可能性が考えられた.さらに,咀嚼を必要とする食物形態に移行したことで,タイミングのずれを助長し,誤嚥の機会を増やした可能性が考えられた.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.11.2_137