献腎移植後にI型大動脈解離・肝不全を発症し,ステロイドのみの免疫抑制療法により移植腎廃絶を回避し得た1例

「I. はじめに」 腎移植患者の心血管・脳血管障害死亡頻度は比較的高いが, 腎移植後に発症した急性大動脈解離救命例の報告はまれである1). 今回われわれは献腎移植7カ月後に発症したI型大動脈解離に対し, 上行大動脈置換術を施行後, 一時的な血液浄化療法および免疫抑制剤の減量により, 救命するにとどまらず移植腎機能廃絶を回避し得た症例を経験したため報告する. 「II. 症例」 患者: 44歳, 男性 主訴:移植腎不全, 呼吸不全, 意識障害 既往歴:高血圧, 慢性副鼻腔炎 家族歴:特記すべき事項なし 現病歴(図1): 21歳で蛋白尿を指摘され, IgA腎症の診断となった. 28歳時に血液透析を導...

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Published in移植 Vol. 48; no. 1; pp. 053 - 057
Main Authors 北嶋, 俊寛, 丸井, 祐二, 田中, 希穂, 大橋, 健一, 冨川, 伸二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 10.03.2013
日本移植学会
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Summary:「I. はじめに」 腎移植患者の心血管・脳血管障害死亡頻度は比較的高いが, 腎移植後に発症した急性大動脈解離救命例の報告はまれである1). 今回われわれは献腎移植7カ月後に発症したI型大動脈解離に対し, 上行大動脈置換術を施行後, 一時的な血液浄化療法および免疫抑制剤の減量により, 救命するにとどまらず移植腎機能廃絶を回避し得た症例を経験したため報告する. 「II. 症例」 患者: 44歳, 男性 主訴:移植腎不全, 呼吸不全, 意識障害 既往歴:高血圧, 慢性副鼻腔炎 家族歴:特記すべき事項なし 現病歴(図1): 21歳で蛋白尿を指摘され, IgA腎症の診断となった. 28歳時に血液透析を導入され, その後維持透析をされていた. 43歳時に60代男性の心停止ドナーによる献腎移植目的で虎の門病院分院に入院した. 入院時身長179cm, 体重59.0kg (DW 59.3kg)であり, 降圧薬はnifedipine 60mg/分3, amlodipine besilate 10mg/分2, irbesartan 100mg/就寝前を服用していた.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.48.053