サルモデルを用いた異常な痛みを引き起こす神経可塑性の解明
「1. はじめに」 国際疼痛学会は, 痛みは, 「組織の実質的な損傷や潜在的な組織損傷に伴う, あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される不快な感覚または情動体験」と定義している. 痛みにはさらに生体の防御信号としての役割がある侵害受容性疼痛と, 末梢神経や中枢神経の体性感覚系における障害によって出現する神経障害性疼痛に分けられる. 前者は自己の防衛や生存のために重要な生体反応応答であるが, 後者は生理的な反応には関係ない異常な痛みを知覚し, 強い不快情動を認知してしまう状態で, それらが長引くと鬱や不安を発生させることから異常な状態である. 神経障害性疼痛の特徴としては, 常に痛みを感...
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Published in | 日本基礎理学療法学雑誌 Vol. 22; no. 1; pp. 18 - 24 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本基礎理学療法学会
10.12.2019
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ISSN | 2186-0742 2434-0731 |
DOI | 10.24780/jptf.22.1_18 |
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Summary: | 「1. はじめに」 国際疼痛学会は, 痛みは, 「組織の実質的な損傷や潜在的な組織損傷に伴う, あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される不快な感覚または情動体験」と定義している. 痛みにはさらに生体の防御信号としての役割がある侵害受容性疼痛と, 末梢神経や中枢神経の体性感覚系における障害によって出現する神経障害性疼痛に分けられる. 前者は自己の防衛や生存のために重要な生体反応応答であるが, 後者は生理的な反応には関係ない異常な痛みを知覚し, 強い不快情動を認知してしまう状態で, それらが長引くと鬱や不安を発生させることから異常な状態である. 神経障害性疼痛の特徴としては, 常に痛みを感じる安静時痛の他に, 通常は痛みを伴わないはずの触圧覚刺激に対し痛みを感じる異痛症(アロディニア)や, 痛みがより増大する痛覚過敏が知られている. 理学療法の臨床場面においては神経障害性疼痛に対して具体的なアプローチ方法がなく, しばしば軽い刺激によっても激痛を伴うことから, リハビリテーション介入を阻害し, 患者の社会復帰が著しく制限される要因ともなりうる. |
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ISSN: | 2186-0742 2434-0731 |
DOI: | 10.24780/jptf.22.1_18 |