UHC実現に向けた医薬品に関する諸問題
SDGsにおいて、ユニバーサルヘルスカバレージ(UHC)は保健医療分野の重要なターゲットの一つである。UHCにおいて保健医療サービスの提供は重要な要素で、サービス提供の中で医薬品はやはり重要な資源の一つである。 今回、国際保健医療学会のシンポジウムにて、開発途上国を中心に、UHC実現に向けた薬剤に関する課題をレビューし、その課題解決に向け討論・考察を行ったので報告する。 途上国において医薬品へのアクセスに関する問題は重要で、“全ての人々が、「必要とする医薬品」を、「適正価格」で入手し、「安全かつ効果的に使用」することが、いつでもできること”が必要である。 実際にラオスで、首都の大病院...
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Published in | 国際保健医療 Vol. 34; no. 1; pp. 35 - 43 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本国際保健医療学会
20.03.2019
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0917-6543 |
DOI | 10.11197/jaih.34.35 |
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Summary: | SDGsにおいて、ユニバーサルヘルスカバレージ(UHC)は保健医療分野の重要なターゲットの一つである。UHCにおいて保健医療サービスの提供は重要な要素で、サービス提供の中で医薬品はやはり重要な資源の一つである。 今回、国際保健医療学会のシンポジウムにて、開発途上国を中心に、UHC実現に向けた薬剤に関する課題をレビューし、その課題解決に向け討論・考察を行ったので報告する。 途上国において医薬品へのアクセスに関する問題は重要で、“全ての人々が、「必要とする医薬品」を、「適正価格」で入手し、「安全かつ効果的に使用」することが、いつでもできること”が必要である。 実際にラオスで、首都の大病院(マホソット病院)や地方医療施設で医薬品リスト、使用量、購入並びに販売価格、流通について調査を行った。結果、大病院では神経系薬剤(麻酔薬を含む)の購入金額の割合が最大(29%)で、国内で高度な手術が受けられる病院は少なく、患者集中のためと考えられた。次いで消化管と代謝作用薬が14%。抗結核薬、ARV、抗マラリア薬、ワクチンはグローバルファンドやGAVI等から提供されるため購入金額に反映されず、抗感染症薬は13%であった。地方の郡病院では抗感染症薬が43%と最多で、上気道感染や消化器症状中心の診療のためと思われる。保健省は基準を設けて国内に流通する医薬品の質や価格の評価・安定化を図っているが、国民は民間薬局等で医師の診療なく医薬品を購入でき、医薬品の適正使用の観点から多くの課題が残る。 医薬品の品質も重要で、流通業者や医療者、患者は不良品や偽造品であっても外装外形からそれを識別できない。例えば生活習慣病治療薬の一つオメプラゾールに関するカンボジアでの調査では、収集品の中に酸性条件や緩衝液中で溶出試験不適合が見つかった他、不適合品のカプセルのCT検査では、腸溶性皮膜が欠如した顆粒が散見された。カンボジアではその後、一部の医薬品の登録に溶出試験成績を要求するようになり、日本と同様な規制を始めた。 途上国での適正な医薬品の供給のためには当該国当局による最低限の医薬品規制が必要であるが、規制当局・規制官のCapacityは人数的にも、個々の能力の点でも不十分である。各国がその薬事規制を国際的に調和させ、他国と規制協力するべく、規制官の人材育成を国際的に支援する必要がある。 |
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ISSN: | 0917-6543 |
DOI: | 10.11197/jaih.34.35 |