編集者への手紙 (日輸会誌42 (5): 231-232, 1996.) に対するコメント
“ヒトパルボウイルスB19とその感染症について”1)に示した如く, 供血者を含む一般正常人に於けるヒトパルボウイルスの感染様式は急性感染症の形をとり, 3~5日間のウイルス血症期(I期)に引き続いて2~3ヵ月に及ぶ抗原抗体複合物血症の時期(II期)が存在する. 臨床症状としては筋肉痛, 悪寒, 発熱が見られる時がI期に, 紅斑, 関節痛, 関節炎が見られる時期がII期に相当する. Receptor-mediated hemagglutination法(RHA)はI期にある血液を, PCRはI期及びII期の血液を検出する. 時間的には, II期はI期の約20倍の長さがあり, I期, II期の区別...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 42; no. 6; pp. 299 - 300 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
1996
日本輸血学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0546-1448 1883-8383 |
DOI | 10.3925/jjtc1958.42.299 |
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Summary: | “ヒトパルボウイルスB19とその感染症について”1)に示した如く, 供血者を含む一般正常人に於けるヒトパルボウイルスの感染様式は急性感染症の形をとり, 3~5日間のウイルス血症期(I期)に引き続いて2~3ヵ月に及ぶ抗原抗体複合物血症の時期(II期)が存在する. 臨床症状としては筋肉痛, 悪寒, 発熱が見られる時がI期に, 紅斑, 関節痛, 関節炎が見られる時期がII期に相当する. Receptor-mediated hemagglutination法(RHA)はI期にある血液を, PCRはI期及びII期の血液を検出する. 時間的には, II期はI期の約20倍の長さがあり, I期, II期の区別なく献血が行われるならば, RHA(-)PCR(+)の血液はRHA(+)PCR(+)の約20倍の頻度で現われると推定される. ウイルス量から考察すると, I期は大部分は10^9-13 copies/mlの高濃度の中和されていないウイルスが存在し, II期では10^5-6 copies/ml以下の中和されたウイルスが存在する. In vivoではI期はウイルスの排出が見られ, 人から人への感染が生じるが, II期では人から人への感染は見られない2). In vitroでは, I期にある血清は感染宿主である骨髄細胞中のCFU-eを傷害するがII期の血清は逆にCFU-eをパルボウイルスによる傷害から保護する3)4). 輸血に於いて, I期にある血液は感染を惹起するがII期にある血液で感染が成立するか否かは不明である. 供血者スクリーニングの為の短時間多検体処理に適しており, 且つI期及びII期の両方の時期をカバーする検査法が無い現時点では, 少なくともI期にある感染性の高い血液は供血者スクリーニングによって排除するのが望ましいと考えられる. |
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ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.42.299 |