保存的に経過観察しえた虚血性胃症の1例
「和文要旨」症例は74歳, 男性. 吐血, 下血, 強い腹痛にて緊急入院, 緊急上部消化管内視鏡検査にて胃全体にびまん性の潰瘍・びらんを形成し, 易出血で高度な浮腫を伴う虚血による所見を認めた. 基礎疾患に心房細動があり, 血液検査では線溶系が亢進し, 腹部CT検査では胃壁の浮腫による肥厚を認めた. 造影CTでは腹腔動脈に閉塞は認めず, 血流再開により胃梗塞・穿孔性腹膜炎には至らず保存的加療にて軽快した. 「はじめに」胃は腹腔動脈や上腸間膜動脈からの栄養を受け, 虚血に強い臓器とされ, 虚血性胃症の報告は少ない1~5). 今回我々は, 内視鏡所見・CT所見および臨床経過により虚血性胃症と思われ...
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Published in | Progress of Digestive Endoscopy Vol. 72; no. 2; pp. 56 - 57 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
2008
日本消化器内視鏡学会関東支部会 |
Subjects | |
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ISSN | 1348-9844 2187-4999 |
DOI | 10.11641/pde.72.2_56 |
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Summary: | 「和文要旨」症例は74歳, 男性. 吐血, 下血, 強い腹痛にて緊急入院, 緊急上部消化管内視鏡検査にて胃全体にびまん性の潰瘍・びらんを形成し, 易出血で高度な浮腫を伴う虚血による所見を認めた. 基礎疾患に心房細動があり, 血液検査では線溶系が亢進し, 腹部CT検査では胃壁の浮腫による肥厚を認めた. 造影CTでは腹腔動脈に閉塞は認めず, 血流再開により胃梗塞・穿孔性腹膜炎には至らず保存的加療にて軽快した. 「はじめに」胃は腹腔動脈や上腸間膜動脈からの栄養を受け, 虚血に強い臓器とされ, 虚血性胃症の報告は少ない1~5). 今回我々は, 内視鏡所見・CT所見および臨床経過により虚血性胃症と思われた症例を経験し, 保存的に経過観察しえたので, 非常に稀と考え報告する. 「症例」患者:72歳, 男性. 主訴:吐血, 下血, 強い腹痛. 既往歴:心房細動, 認知症. 現病歴:平成19年4月1日吐血, 下血, 強い腹痛が出現し入院となった. 入院時現症:168cm, 58kg, 血圧184/108mmHg, 心拍数92/分. 不整脈あり. 眼球結膜に貧血なし, 黄疸なし. 肺雑音なし. 腹部に圧痛, 軽度反跳痛あり. 肝脾は触知せず. 入院時検査所見:白血球増多(27,200/μl), FDP(27.63μg/ml)とDダイマーの上昇(8.42μg/ml)を認めた. 入院後経過:上部消化管内視鏡検査では, 胃内に血液が貯留し, 胃全体, 食道胃接合部から十二指腸球部まで, びまん性に潰瘍・びらん局面を形成し, 易出血性粘膜で高度な浮腫を伴い虚血性変化と判断した(Color 1,2). |
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ISSN: | 1348-9844 2187-4999 |
DOI: | 10.11641/pde.72.2_56 |