上部消化管内視鏡検査が誘因と考えられた一過性全健忘の1例

「はじめに」一過性全健忘(以下TGA)とは, 数時間持続する健忘と困惑を主徴とする発作1)とされており, 順向性健忘と逆行性健忘を示す特異な病態である. 今回我々は上部消化管内視鏡検査(以下FGS)が誘因と考えられたTGAの1症例を経験したので報告する. 「症例」患者:71歳, 女性. 主訴:逆行性健忘, 順向性健忘. 既往歴:39歳時虫垂切除術. 頭部外傷やてんかんの既往はない. 現病歴:63歳時C型肝硬変と診断され, 自治医科大学附属大宮医療センターで加療中. 当センターにおける過去2回のFGSでは, 検査による偶発症の発生はなかった. 2000年8月31日, 定期観察のためFGSを行った...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inProgress of Digestive Endoscopy Vol. 60; no. 2; pp. 44 - 46
Main Authors 上平, 晶一, 吉田, 行雄, 平川, 隆一, 井廻, 道夫, 澤田, 幸久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部 2002
日本消化器内視鏡学会関東支部会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1348-9844
2187-4999
DOI10.11641/pde.60.2_44

Cover

More Information
Summary:「はじめに」一過性全健忘(以下TGA)とは, 数時間持続する健忘と困惑を主徴とする発作1)とされており, 順向性健忘と逆行性健忘を示す特異な病態である. 今回我々は上部消化管内視鏡検査(以下FGS)が誘因と考えられたTGAの1症例を経験したので報告する. 「症例」患者:71歳, 女性. 主訴:逆行性健忘, 順向性健忘. 既往歴:39歳時虫垂切除術. 頭部外傷やてんかんの既往はない. 現病歴:63歳時C型肝硬変と診断され, 自治医科大学附属大宮医療センターで加療中. 当センターにおける過去2回のFGSでは, 検査による偶発症の発生はなかった. 2000年8月31日, 定期観察のためFGSを行った. 検査当日, キシロカインビスカス, キシロカインスプレーの咽頭麻酔とブスコパン20mg筋肉注射を受け, 内視鏡検査室に入室した. 検査中は検者(著者)に指示された呼吸法(鼻吸気口呼気)を努めて実践している様子で, 過換気状態であった. 検査は10分程でトラブルなく終了. 特に苦痛を訴えることもなく検査室を退室した. 退室後「私は何をしてたの?」と看護婦に問い, 呆然としながら戸惑っているため著者が呼ばれた. Table 1にFGS終了後の経過を示す. 前日の晩からの逆行性健忘と順向性健忘が認められた. また経過を通じて意識障害や自己認識障害, 他の神経学的徴候は一切出現せず, 頭部外傷やてんかんの既往がないことからTGAと診断し, 経過観察目的で入院となった.
ISSN:1348-9844
2187-4999
DOI:10.11641/pde.60.2_44