喉頭気管食道瘻閉鎖術後に喉頭挙上・食道入口部開大の悪化を呈した小脳出血・嚥下障害の1症例

喉頭気管食道瘻閉鎖術後に喉頭挙上と食道入口部開大の悪化を呈した小脳出血・嚥下障害症例を経験した.症例は51歳の男性で,小脳血管芽腫摘出術を受けた同日夜に小脳出血をきたし,意識・呼吸が低下,気管内挿管の後,血腫除去術を受けた.術後,不穏による自己抜管と緊急挿管,気管切開,人工呼吸器離脱,胃瘻造設術を経て,術後3か月からゼリー食による経口摂食訓練が開始された.一時,誤嚥が悪化し摂食訓練が中止されたが,その後訓練が再開され,訓練開始5か月後以降はレトルト粥を1日1回摂食していた.症例は発症後1年2か月で,当院に転院した.転院直後の嚥下造影検査(以下VF検査)で,中等度の口腔期・咽頭期障害が認められ,...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 6; no. 1; pp. 56 - 63
Main Authors 金井, 日菜子, 岡田, 和也, 中原, はるか, 藤谷, 理恵, 藤谷, 順子, 峯下, 圭子, 奥平, 奈保子, 星野, 由香, 田山, 二朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 30.06.2002
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.6.1_56

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Summary:喉頭気管食道瘻閉鎖術後に喉頭挙上と食道入口部開大の悪化を呈した小脳出血・嚥下障害症例を経験した.症例は51歳の男性で,小脳血管芽腫摘出術を受けた同日夜に小脳出血をきたし,意識・呼吸が低下,気管内挿管の後,血腫除去術を受けた.術後,不穏による自己抜管と緊急挿管,気管切開,人工呼吸器離脱,胃瘻造設術を経て,術後3か月からゼリー食による経口摂食訓練が開始された.一時,誤嚥が悪化し摂食訓練が中止されたが,その後訓練が再開され,訓練開始5か月後以降はレトルト粥を1日1回摂食していた.症例は発症後1年2か月で,当院に転院した.転院直後の嚥下造影検査(以下VF検査)で,中等度の口腔期・咽頭期障害が認められ,嚥下中誤嚥が認められた.さらに,食道と気道の交通により食塊が気管に流入していた.耳鼻咽喉科での精査の結果,喉頭気管食道瘻が認められ,瘻孔の閉鎖術が施行された.術後3週間で当院に帰院し,VF検査を行なったところ,瘻孔は完治していたが,喉頭挙上と食道入口部開大は悪化し,造影剤の梨状窩残留が著明であった.約3か月間,間接的訓練と段階的な直接的訓練を行なった結果,軟飯・軟菜の経口摂食が可能になった.VF検査では嚥下反射のタイミング,喉頭挙上,食道入口部開大の改善を認めた.症例においては2つの点で従来報告されてきた気管食道瘻例と異なっていた.すなわち,①瘻孔の位置がカフの圧力が加わる部位と一致せず,喉頭下端から気管上端という上位にあった,②瘻孔とその閉鎖術を原因とする嚥下障害だけではなく,小脳出血による先行期・口腔期・咽頭期の障害を基盤として有していた.その結果,経口摂食が自然経過では獲得されず,積極的な摂食・嚥下リハビリテーションを必要とした.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.6.1_56