ルリコナゾールのヒト爪由来ケラチンに対する親和性
抗真菌薬ルリコナゾール (LLCZ) の爪白癬に対する治療効果を解析するために,LLCZの爪中薬物動態を左右する爪ケラチンとの親和性を,エフィナコナゾール (EFCZ) を対照に調べた.健常人および爪白癬患者の爪から調製したケラチン粉末40 mgに4 mlの緩衝液を加え,薬物 (3濃度) を添加して振盪 (37℃) することによって薬物の吸・脱着率を求めるとともに,試験条件による影響を避けるためフロインドリッヒの吸着等温式による理論的な解析を実施した.その結果,健常人および爪白癬患者のいずれの爪ケラチンでもLLCZはEFCZにくらべ高い吸着率および低い脱着率を示した.フロインドリッヒの吸着係数...
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Published in | Medical Mycology Journal Vol. 58; no. 4; pp. J113 - J119 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
Tokyo
日本医真菌学会
01.01.2017
Japan Science and Technology Agency |
Subjects | |
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Summary: | 抗真菌薬ルリコナゾール (LLCZ) の爪白癬に対する治療効果を解析するために,LLCZの爪中薬物動態を左右する爪ケラチンとの親和性を,エフィナコナゾール (EFCZ) を対照に調べた.健常人および爪白癬患者の爪から調製したケラチン粉末40 mgに4 mlの緩衝液を加え,薬物 (3濃度) を添加して振盪 (37℃) することによって薬物の吸・脱着率を求めるとともに,試験条件による影響を避けるためフロインドリッヒの吸着等温式による理論的な解析を実施した.その結果,健常人および爪白癬患者のいずれの爪ケラチンでもLLCZはEFCZにくらべ高い吸着率および低い脱着率を示した.フロインドリッヒの吸着係数 (KadsF) は5~7倍,脱着係数 (KadsF) は約2倍とLLCZがEFCZよりも高い値となり,LLCZはEFCZにくらべて爪ケラチンに吸着しやすく,脱着されにくいことが理論的に裏付けられ,LLCZは爪ケラチンに高い親和性を示すと考えられた.脱着操作を反復した際の脱着率の推移を加味すると,EFCZとは爪中での動態が異なり,LLCZは爪ケラチンへの高い親和性の特徴を活かして爪をリザーバーとして貯留され,感染局所で持続的に遊離して抗真菌活性を発揮すると考えられた.両薬物ともにケラチン吸・脱着性は健常人と爪白癬患者間で異なる傾向がみられており,爪白癬患者の爪での薬物動態を考察するうえでより詳細な検討が必要と考えられた. |
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ISSN: | 2185-6486 2186-165X |
DOI: | 10.3314/mmj.17-00009 |