高齢者医療における医師の役割

老人医療における医師の役割ということで, 私の考えを少し述べさせて頂きたいと思います. 日本の平均寿命は, 世界一だということは先生方御存知の通りだと思います. イギリスの統計での患者の死の確率をみますと, 結局, 最後はみんな死にますから無限大にいく, 死亡年齢のピークは80歳代にきます. その場合でも死亡の原因は老衰で死ぬのは5%以下です. 我々の所は半数近くは解剖していますが, ほとんどが何らかの疾患で死んでいる. ふつう急性の病気で死にますが, 慢性の病気がその基盤にあるということであります. 1960年代にKohnという病理学者が, 年齢と死亡の対数をとるというと, これは直線的にな...

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Published in医療 Vol. 50; no. 12; pp. 818 - 822
Main Author 小澤, 利男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1996
国立医療学会
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Summary:老人医療における医師の役割ということで, 私の考えを少し述べさせて頂きたいと思います. 日本の平均寿命は, 世界一だということは先生方御存知の通りだと思います. イギリスの統計での患者の死の確率をみますと, 結局, 最後はみんな死にますから無限大にいく, 死亡年齢のピークは80歳代にきます. その場合でも死亡の原因は老衰で死ぬのは5%以下です. 我々の所は半数近くは解剖していますが, ほとんどが何らかの疾患で死んでいる. ふつう急性の病気で死にますが, 慢性の病気がその基盤にあるということであります. 1960年代にKohnという病理学者が, 年齢と死亡の対数をとるというと, これは直線的になるということを発表しています. (図1). これは全死亡率でも, 全死亡率から癌を引いても動脈硬化を引いてもすべて直線的になる. ほとんどすべての疾患が直線的になるということは年を取れば取るほど, 慢性疾患も急性疾患も集中して現われるということであります. もう, すでに終息したと思われるような粟粒結核や梅毒, あるいは破傷風というような疾患でも, 80歳以上ではしばしばみることができます.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.50.818