腎機能低下に伴いシクロスポリンの全身クリアランスが低下した骨髄移植患者の1症例

緒言 シクロスポリン(CyA)は, 骨髄移植をはじめその他の移植領域において幅広く使用されている免疫抑制剤である. しかしながら, その有効治療域は狭く, その効果を十分に引き出し, 副作用の発現を最小限に抑えるためには, 全血中CyA濃度を測定し適切な濃度で管理する必要がある. また, CyAは, 肝ミクロソーム中の代謝酵素であるCYP3A4により代謝されるため, この酵素の代謝系を阻害する薬剤との併用によりCyAの薬物体内動態が変動することが知られている1). フルコナゾール(FLCZ)は, 骨髄移植時の真菌感染の予防や治療に使用され, 主に腎より未変化体として70%が排泄される一方2),...

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Published in医療薬学 Vol. 30; no. 5; pp. 321 - 325
Main Authors 山本, 育由, 橋本, 亜衣子, 上田, 睦明, 宮本, 悦子, 梶田, 貴司, 西川, 豊, 中塚, 英太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本医療薬学会 2004
日本医療薬学会
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ISSN1346-342X
1882-1499
DOI10.5649/jjphcs.30.321

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Summary:緒言 シクロスポリン(CyA)は, 骨髄移植をはじめその他の移植領域において幅広く使用されている免疫抑制剤である. しかしながら, その有効治療域は狭く, その効果を十分に引き出し, 副作用の発現を最小限に抑えるためには, 全血中CyA濃度を測定し適切な濃度で管理する必要がある. また, CyAは, 肝ミクロソーム中の代謝酵素であるCYP3A4により代謝されるため, この酵素の代謝系を阻害する薬剤との併用によりCyAの薬物体内動態が変動することが知られている1). フルコナゾール(FLCZ)は, 骨髄移植時の真菌感染の予防や治療に使用され, 主に腎より未変化体として70%が排泄される一方2), CYP3A4阻害能を有する. CyAとFLCZ併用により全血中CyA濃度は上昇するが, その相互作用はFLCZ投与量に依存することから, 骨髄移植では100mg/day以下の低用量では通常生じないと報告されている3,4). また, CyA薬物体内動態は薬物間相互作用以外にも種々の因子により変動するが5), 従来腎機能はCyA薬物動態に影響を及ぼさないとされてきた5).
ISSN:1346-342X
1882-1499
DOI:10.5649/jjphcs.30.321