唾液分泌ニ於ケル迷走神經素 (Vagusstoff) ニ就イテ

• Published in: Shokakibyogaku Vol. 1; no. 5; pp. 873 - 882
• Main Author: 矢崎, 富美人
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 財団法人 日本消化器病学会 1936; The Japanese Society of Gastroenterology
• ISSN: 2185-1158
• DOI: 10.11405/nisshoshi1936.1.873

1921年O. Loewiガ迷走神經刺戟ノ結果, 其ノ末梢ニ於イテ特殊物質ガ生成サレ, ソレガ體液中ニ移行シテ或作用ガ發現スルナリト提唱シテ “迷走神經素” ト命名セルヨリ, 其ノ本態ニ關スル幾多ノ業績ガ發表サレタリ. 而シテソレ等ノ檢索ハ主トシテ心臟・眼房水又ハ消化腺ノ分泌ニ就キテチサレタルガ, 何レモ迷走神經素ハ血液中ニ移行ストノ想像ノ下ニ迷走神經刺戟ノ際ノ血液ニ依リテソレ等ノ作用ガ惹起セラレザルヤチ檢シタルモノナリ. 竝ニ於イテ余ハ迷走神經ヲ介シテ腺細胞ヲ刺戟シタル結果分泌セラレタル分泌物中ニハ迷走神經素ハ含有セラレザルヤヲ見ント欲シ, 本實驗チ試ミタリ. 顎下腺唾液ニ就キテ恒久性瘻管ヲ作成シ, 先ヅ第一階程トシテ「ピロカルピン」刺戟ニ依ツテ分泌セラレタル唾液ニ唾液分泌能カナキヤ否ヤヲ檢シタル結果其ノ能力テ確認シ, 而シテ其ノ能力ハ煮沸又ハ孵卵器内ニ放置スルコトニ依リラ消失スルコトヲ見タリ. サレド之レヲ以テ直チニ「ピロカルビン」唾液中ニ迷走神經素ナル特殊物質ガ存在スルコトヲ證シ得タリトスルハ早計ニ過グルノ観アリ. 故ニ竝ニハ唯是迄得タル實驗成績ヲ擧グルニ止メ, 更ニ研究ヲ進ムルノ資ニ供セント欲ス.