無輸血開心術

本邦では1950年代から心臓外科で開心術が行われるようになつた. 当時, 開心術後の輸血後肝炎発生率は50%を超えていた. 1964年9月から献血制度が導入されたが, 輸血後肝炎はいぜんとして20%前後であった. 1970年頃より, 本邦で無輸血開心術が試みられるようになった. 本稿では本邦における無輸血開心術の分類, 方法, 臨床成果などを考察した. 無輸血開心術での最低体重例は単純超低体温法で8kg, 体外循環法で5kgと報告されている. 今後さらに, 人工心肺充填量の削減, 血液濃縮による返血, 自己血輸血並びに長時間体外循環での血液凝固能の保持などにより安全性と適応の拡大が期待される....

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Published in医療 Vol. 51; no. 11; pp. 503 - 507
Main Author 馬場, 尚道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1997
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.51.503

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Summary:本邦では1950年代から心臓外科で開心術が行われるようになつた. 当時, 開心術後の輸血後肝炎発生率は50%を超えていた. 1964年9月から献血制度が導入されたが, 輸血後肝炎はいぜんとして20%前後であった. 1970年頃より, 本邦で無輸血開心術が試みられるようになった. 本稿では本邦における無輸血開心術の分類, 方法, 臨床成果などを考察した. 無輸血開心術での最低体重例は単純超低体温法で8kg, 体外循環法で5kgと報告されている. 今後さらに, 人工心肺充填量の削減, 血液濃縮による返血, 自己血輸血並びに長時間体外循環での血液凝固能の保持などにより安全性と適応の拡大が期待される. 輸血後感染症, 特に輸血後肝炎の発生に関しては, 1990年に輸血後B型肝炎, 1995年に輸血後C型肝炎がスクリーニング法の進歩により終焉した. 今後はHCV, GVHDなどの予防対策が緊急課題である.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.51.503