球麻痺症状が比較的軽度の時点で高度の声帯麻痺を呈した筋萎縮性側索硬化症の1例

患者は75歳,男性である.両側上肢の運動障害で発症し,構音障害と下肢の筋力低下も現れて進行した.孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された.発症から約2年後,%努力肺活量が60%程度で嚥下障害も比較的軽度であったが誤嚥性肺炎をおこした.痰の喀出困難と軽度の嗄声があり,喉頭鏡検査で両側の声帯に高度の外転障害がみられた.窒息する危険が高いため気管切開をおこなった.声門狭窄をともなうALSの報告例では,球麻痺症状が出現後平均約1年で高度の声門開大障害がみとめられ,喉頭鏡検査で診断されてすみやかに気管切開を受けた症例が多い.ALS診療においては,球麻痺の程度にかかわらず声帯機能の評価が必要であると...

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Published in臨床神経学 Vol. 51; no. 10; pp. 765 - 769
Main Authors 荒井, 元美, 遠藤, 志織, 大嶋, 吾郎, 八木, 悠樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経学会 2011
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Summary:患者は75歳,男性である.両側上肢の運動障害で発症し,構音障害と下肢の筋力低下も現れて進行した.孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された.発症から約2年後,%努力肺活量が60%程度で嚥下障害も比較的軽度であったが誤嚥性肺炎をおこした.痰の喀出困難と軽度の嗄声があり,喉頭鏡検査で両側の声帯に高度の外転障害がみられた.窒息する危険が高いため気管切開をおこなった.声門狭窄をともなうALSの報告例では,球麻痺症状が出現後平均約1年で高度の声門開大障害がみとめられ,喉頭鏡検査で診断されてすみやかに気管切開を受けた症例が多い.ALS診療においては,球麻痺の程度にかかわらず声帯機能の評価が必要であると思われる.
ISSN:0009-918X
1882-0654
DOI:10.5692/clinicalneurol.51.765