医療者へのDVに関する教育

看護教育においてDVに関する教育は、看護基礎教育の中で行われている。疾病構造の変化や少子超高齢社会の進展など医療をめぐる状況は大きく変わる中、看護師に求められる能力は複雑性・多様性を増し、現在の看護基礎教育のカリキュラムは過密である。このような中、DVに関する教育が十分に行えているとは言えない。しかし看護師として臨床現場にでると、様々な場所で突然に被害者と出会い、対応を迫られる。配偶者をもつ成人女性の3人に1人が配偶者から暴力を受けた経験をもち、この内7人に1人は命の危険を感じた経験をもつ(平成29年度 男女間における暴力に関する調査)。暴力による健康被害で医療機関を受診する者は少なくない。一...

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Published inThe Nursing Pharmacology Conference Vol. 2021.1; p. S2-2
Main Author 丸山, 菜穂子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬理学会 2021
Japanese Pharmacological Society
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ISSN2435-8460
DOI10.34597/npc.2021.1.0_S2-2

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Summary:看護教育においてDVに関する教育は、看護基礎教育の中で行われている。疾病構造の変化や少子超高齢社会の進展など医療をめぐる状況は大きく変わる中、看護師に求められる能力は複雑性・多様性を増し、現在の看護基礎教育のカリキュラムは過密である。このような中、DVに関する教育が十分に行えているとは言えない。しかし看護師として臨床現場にでると、様々な場所で突然に被害者と出会い、対応を迫られる。配偶者をもつ成人女性の3人に1人が配偶者から暴力を受けた経験をもち、この内7人に1人は命の危険を感じた経験をもつ(平成29年度 男女間における暴力に関する調査)。暴力による健康被害で医療機関を受診する者は少なくない。一方で、DV被害を主訴に受診する者は非常に少ない。同調査では、被害を受けた女性のうち誰かに相談した経験をもつ者は6割にとどまり、その相談先が医療関係者であったのはわずか2.8%であった。つまり医療者がDVやその健康被害について十分に理解し、被害者を発見する眼を持たなければ被害者を見逃している可能性が高い。 被害者を早期に発見し、適切な支援を提供するためには現任教育が必須である。World Health Organizationは、2013年に医療機関での被害女性対応のためのガイドラインを、2019年には医療者向け教育ガイドを発行した。日本では、周産期医療における被害者支援のためのガイドラインが2004年に公表された。さらに日本助産学会が2016年に発行したエビデンスに基づく助産ガイドラインの中で、DVスクリーニングのツールと方法、陽性者への支援の有効性に関する推奨度を示した。このように日本の特に周産期医療において、現任医療者がDV被害者支援のスキルを学ぶ媒体は整ってきている。しかし、DVに関する現任教育及び被害者支援の取り組みは進んでいない現状がある。2008年の調査では、関東の74周産期医療施設においてスタッフへDVに関する教育を行っている施設は3%、DVスクリーニングを実施している施設は5%であった。その後2016年の調査においても、全国の362周産期医療施設におけるスクリーニング実施率は6.9%であった。そこで私はDV被害者支援促進を目指したE-learningを開発し、全国の周産期領域の看護者を対象に有効性を検証した。本シンポジウムではこの研究成果と課題を紹介する。
Bibliography:2021.1_S2-2
ISSN:2435-8460
DOI:10.34597/npc.2021.1.0_S2-2