下顎前歯舌側部歯槽粘膜の血流動態の実験的観察

目的: 下顎前歯部舌側歯槽面においては, 部分床義歯の義歯床および大連結子をいかに設計するかが問題となる.本実験では同部の血流動態に着目し, 安静時の状態および義歯を設置した状態を想定した加圧時の状態を, レーザードップラー血流計を用いて測定した. 方法: 測定には特製のスプリントを使用した.測定点は左右犬歯間の舌側歯槽面に設定した18点で, 同部の無圧状態の安静時血流量と加圧時血流量とを測定した.加圧に関しては歯槽面を上下的に3分割し, 3部位すべてを加圧する全加圧, 上部だけ加圧する上部加圧, 下方2部位を加圧する下方加圧, 下部だけを加圧する下部加圧の4条件とした.また, 同時に測定点の...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 47; no. 5; pp. 797 - 806
Main Authors 川北, 雅子, 岡崎, 祥子, 平井, 秀明, 藤波, 和華子, 星合, 和基, 藤田, 三奈子, 田中, 貴信, 長谷川, 信洋, 太田, 功
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本補綴歯科学会 2003
日本補綴歯科学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0389-5386
1883-177X
DOI10.2186/jjps.47.797

Cover

More Information
Summary:目的: 下顎前歯部舌側歯槽面においては, 部分床義歯の義歯床および大連結子をいかに設計するかが問題となる.本実験では同部の血流動態に着目し, 安静時の状態および義歯を設置した状態を想定した加圧時の状態を, レーザードップラー血流計を用いて測定した. 方法: 測定には特製のスプリントを使用した.測定点は左右犬歯間の舌側歯槽面に設定した18点で, 同部の無圧状態の安静時血流量と加圧時血流量とを測定した.加圧に関しては歯槽面を上下的に3分割し, 3部位すべてを加圧する全加圧, 上部だけ加圧する上部加圧, 下方2部位を加圧する下方加圧, 下部だけを加圧する下部加圧の4条件とした.また, 同時に測定点の粘膜厚径を, 超音波粘膜厚径測定器を用いて測定した. 結果: 舌側歯槽面の安静時血流量は, 歯種別では差は認められなかったが, 高低別では差がみられ, 口腔底部は歯肉縁部の約1.8倍の血流量であり, 底部になるほど血流量は増加した.加圧時血流量は, 測定部位間で下部はほかの加圧部位と比較して血流量が多かった.加圧条件では, 下部加圧と全加圧で差が認められ, 下部加圧ではすべての部位で血流量が増加し, 全加圧では下部のみ増加した.舌側歯槽面の平均粘膜厚径は0.83mmであった. 結論: 下顎前歯部歯槽面は血流の観点からみると, 安静時は近遠心的には差がなく, 高低別では下部ほど血流量が多く, 加圧時には上部のほうが下部に比べて影響を受けやすい.
ISSN:0389-5386
1883-177X
DOI:10.2186/jjps.47.797