2011年東北地方太平洋沖地震:海底地形データから明らかにされた海底変動

2011年東北地方太平洋沖地震では,海溝軸周辺までの断層破壊に伴う海底変動が大きな津波の原因と考えられているが,地震に伴う断層運動の上限は正確に見積もられておらず,巨大津波の成因は未解決のままであった.そこで,海溝軸周辺の海底地形変動を明らかにするため,地震発生直後にマルチナロービーム音響測深機により取得した海底地形データを,地震前の海底地形データと比較した.その結果,海溝陸側で海溝軸まで及んだ大きな偏差が確認された.この偏差から地震に伴う海底変動を見積もったところ,海溝陸側が東南東方向に50 m水平に移動して,10 m隆起していると推定された.この大きな水平変動によって,海溝軸陸側の急斜面で...

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Published in地質学雑誌 Vol. 118; no. 9; pp. 530 - 534
Main Authors 小平, 秀一, 富士原, 敏也, 中村, 武史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地質学会 15.09.2012
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Summary:2011年東北地方太平洋沖地震では,海溝軸周辺までの断層破壊に伴う海底変動が大きな津波の原因と考えられているが,地震に伴う断層運動の上限は正確に見積もられておらず,巨大津波の成因は未解決のままであった.そこで,海溝軸周辺の海底地形変動を明らかにするため,地震発生直後にマルチナロービーム音響測深機により取得した海底地形データを,地震前の海底地形データと比較した.その結果,海溝陸側で海溝軸まで及んだ大きな偏差が確認された.この偏差から地震に伴う海底変動を見積もったところ,海溝陸側が東南東方向に50 m水平に移動して,10 m隆起していると推定された.この大きな水平変動によって,海溝軸陸側の急斜面では,実効上10−20 mの大きな隆起をもたらし,数値モデリングによると,この変動が今回の地震に伴う巨大津波の原因と考えられる.
ISSN:0016-7630
1349-9963
DOI:10.5575/geosoc.2012.0052